欠陥模型大百科・粗製濫造版

ENCYCLOPEDIA MODELLICA  “Rough & Ready” version
Private Edition Ver.X.9

石川雅夫(MMI)
第12回モデラーズ・スペース展示会(2001年)

後フォロー(After care)

今年も又、恒例となったこのコーナーから始める訳だが、今回は今年私がHJ誌に掲載させて戴いた記事内容に対する後フォローをメインにさせて貰う事とする。前回パンフの内容に関しては、そのかなりの部分を後に誌上で取り上げているので、それでフォローしきれる筈である。

 先ずは2月号。
 ここでは、「Mr.メタルカラー・アイアンを使って、こすって銀SUNと同じ効果を出す裏ワザ」と云うのを紹介したのだが、まだライター活動が手探り状態だった事もあり、私と編集者との意志疎通が不充分(つまり双方いらぬ遠慮をしてしまった形)となり、結果としてとても判り難い形で記事になってしまった。
 
これは前回パンフにも書いた、「こすって銀SUN」の「魔法の粉」と、アイアンの顔料は同じ物、と云うのを利用しているのだが、商業誌ではそうはっきり書く訳にも行かない、と云うのもマイナスに作用したかも知れない。
 
具体的に私が行った作業と云うのは、先ず大きめのジャンクパーツにアイアンを普段より厚めに吹き、それが乾燥したら綿棒等でその表面からアイアンの顔料を擦り採って、それをそのまま、下地処理をしたパーツに擦り込む、と云う物だった。実はそのジャンクパーツも、そしてそれを綿棒で擦り採っている所も撮影してあったのだが、編集氏は優先順位が低いと判断したらしく、掲載されるには至らなかった。これは事前に重要度を確認しておかなかった私のミスである。
 
また、この技法を編集氏に説明している過程で、「だったら例えば、綿棒にアイアンをしみ込ませておいて、それが完全乾燥してから擦る、ってダメですかね?」と云う提案があった事を付記しておく。実際に試してはいないのだが有望ではないかと思う。人柱はいねーが?

(補足1)
 この2月号作例記事企画段階においては、近いうちに金賞ザクの塗膜構造を完全解説する、と云う事だけは決まっていましたが、具体的な記事形体についてはまだ白紙の状態でした。

 講座を成立させる為には、まず、突然出てきたどこの馬の骨とも判らないオヤジを読者にライターとして認知してもらう必要があります。そこで手始めに、「金賞ザクと同じ塗膜構造で仕上げた作例」を掲載する事になりました。つまりこの作例は、読者に対する、「顔見せ」だった訳で、後に講座をやる為の地ならしみたいなモンだったんですね。だから、最初から塗装自体については一切ここでは解説しないつもりでしたし、実際の記事でもわざと何も書きませんでした。

  まず編集部から提案されたネタは、時期的な事情から、「PGゼロカスタム」でした。しかしこれを私がやった場合、製作期間は最低限の工作でもおそらく2ヶ月、さらに雑誌作例として成立させるにはそれ以上かかるのは間違いない事、又、基本的に白を基調とした、「トリコロール系MS」は金賞ザク構造には向いていない事等を説明し、なるべくジオン系に代表される、「3次曲面」の多いネタにしたい、と希望を述べました。誌面上の印刷では、色彩再現性に限界がある事は金賞ザク撮影の段階でかなり見極めがついていたので、とりあえず印刷で効果の判り易い、「表面反射、ハイライトの映り込み」でも見せられる方向に持って行きたい、と考えた訳です。

  話し合い初期の段階では編集サイドのゼロカスに対するこだわりは割と強く、「インナーフレーム部を他のライター氏にお願いして、私が外装だけを担当する」と云う提案までなされる程でした。結局、話が進む内に、「他誌の作例を予想すると、おそらくどこもパール系で仕上げてくるのではないか?」と云う話になり、そうなると埋没してしまう事もありうる、との判断で、ゼロカス案はボツになりましたが、もし期間その他の制約がなければ、それなりに面白いネタではあるので、その内個人的にやる事もあるかも知れません(10年後か?)。

  最終的にMGグフになったのは、「キットの優秀性」、「曲面中心のデザイン」、「リリース時期」等、双方の条件がギリギリせめぎあった結果です(実は作例用キットを受け取ったのは、2000年度展示会の会場だったんですね~)。

  色についても、当初は全くのカラーバリエーションにする方向で、金賞ザクの色をそのまま使う(赤く塗ってシャ{略})、なんて案まで出た程でしたが、当日私が持参していたテストピースの中で、着色パール法の最初期テストで作った紫色のテストピースに編集長が目を留め、「こんな感じも良いんじゃないかなぁ」と言ったのをきっかけに、「紫系」で行く事になり、その後カラーテストを進める内に、「ギリギリ、ラルグフに見えない事もない青紫」と云う方向が決定しました。

続いて5月号講座。

 まず46ページだが、錆びたデザインナイフ刃が並んでる写真。これは私のスジ彫り用具を分解した所である。真ん中が、0.1mm厚のカミソリ刃を整形して作ったメインの刃で、このままではペラペラで実用にはならない為、両側のデザインナイフ刃で挟み、先端を少しだけ出す形にして使っている。
 
なお、ノコ刃を使ってスジ彫り、と云うと、正にノコギリの使い方をする、と勘違いする方が必ずおられる様だが、そう云う使い方は全くない訳ではないにせよ、滅多にしない。先端部だけを立てて、Pカッターの様に引いて使うのである。この点については、私の講座より、以前紹介した、「空モデルテクニック」に判り易い解説が出ているので、こちらを参考にする事をお奨めする。
 
また、下の段の、「研ぎくせ」を説明する図解だが、某氏から、「これでは平面出しではなく、曲面出しに見えてしまう」とのご指摘を戴いた。確かにかなり誇張された図ではあるが、あくまでもこちらの意図は、「平面出し」及び、「エッジ出し」である事は改めて強調しておく。
 
このページ、と云うかこの記事最大の欠点はこのページ冒頭の写真だ、と云う指摘には私も諸手を上げて賛意を表明せざるを得ないが、一応私も最初は「やめましょうよ」と反対しているのだ。しかし、編集方針として、この記事には「顔」を付けたい、と云う編集長の希望があり、いまさら写真映りをグダグダ言う歳でもあるまい、と諦め、結果として、受賞発表号に続き、再びマヌケ面をさらす事となった次第である。ご寛恕を願う。
 
続いて47ページ。左上のアルミT字材を使っている最大の理由は、シートのペーパーを等分して切る、と云うのを繰り返すと、ぴったりこの幅になる事である。T字材をペーパー縦寸の1/4の長さに切っておくと、ぴったりこの大きさのペーパーが採れる。
 
右上の写真では変な持ち方をしている様に見えるだろうが、これは私が面出し作業をする際のデフォルトの持ち方なのである。このフォームで、面にぴったり押し付けながら、親指で押し出す様に長いストロークで一気に動かす。他人がやってやり易い方法かどうかは判らないが、連邦系MS等、平面構成の面出しの精度は、私にはこの方法がベストである。
 
中段の腕パーツが3つ並んだ写真は、殆ど違いが判らん、との意見が多数だったが、これについては「良く見れば判る!」としか答え様がない。写真映りは今更言っても始まらないが、反省点のひとつと言える。
 
その下のサフ吹き前後写真だが、キャプションに誤りがある。「スジ彫りを彫り直して」はいないので、この部分を削除して読んで戴きたい。きちんと埋めたにも関わらず、これだけくっきり浮かび上がる、と云うのがこの写真の主旨である。
 
また、その右の写真で、充填材として絵具用顔料を紹介しているが、ここのキャプションにも誤解され易い表現がある。「瞬着に顔料を混ぜて」いる様な印象を受けると思うが、私は直接混ぜて使う事はしない(と云うより出来ない)。基本的に充填用途がメインなので、予め充填箇所に粉を入れておいて、そこに瞬着をしみ込ませる使い方をしている。
 
その下の「キズ消し」の項では、「着色して、視認しやすくする」とあるが、具体的にこの写真で云うと、パーツの表面をマーカーで赤く着色してある。これはサフでチェックをすると、凹部等に不要な塗膜が乗ってしまうので、それを嫌う為である。

 1番下の商品写真にはサフ500と1000が写っているが、私は500を吹いて使う事はない。
 
次に48ページ。ここも経過写真の違いが判り難いかと思うが、根性で読みとって戴きたい。なお、どうでも良い事だが、このガンダム、正しくは「RX-78-V12-Spec.A」である。この表記は、JAF-CON10のプロギャラリー展示においても間違っていた(勿論こちらが事前に指摘しなかったから当然であるが)。一寸見ただけでは前回展示会のままに見えるが、実はこの掲載にあたり、表面を全て研ぎ直してある。当日間に合わなかったメタルシールも貼ってある等、一応気は使っているのだ。
 
で、裏話であるが、実は当初、ここまでを「下地作り編」として、4月号の「プロが作るオラザク特集」の一環として掲載する予定だった(だからこんな変な作例なのである)。しかし、結果としていくらなんでもこれだけじゃ記事として「華」が無さすぎる、と云う編集サイドの判断により、急遽、次号にてトータル8ページでまとめる、と云う形に変更され、この部分もその中に組み込む形にするために構成し直して、最終的にこうなった訳である。
 
「ポジティブ素組み」なる訳の判らないコピーも、当初予定の「オラザク特集」と云う枠の中にスムーズに落とし込める様に、と私が捻り出したシロモノであり、その場合本文前のリードで、「ポジティブ素組み宣言」をする予定だった。「石川式素組み3原則」も同じ理由でまとめた物である(但しどちらもコンセプト、内容的に嘘はない)。ただこちらは当初「4原則」で、「4.撮影の効果ではなく、実物を直接見た際の効果のみを追及する」と云うのが入っていたのだが、雑誌記事にこんな事を書いても仕方ない、と云う事、更に「原則ってのはやっぱり3原則じゃなきゃね」と判断してこちらから削った物である。
 
49ページ。右上の写真で塗料をかき混ぜているのは、アクリルの3mm丸棒。DIY店で入手し易く、シンナーにも溶けないので、塗料の攪拌棒として愛用している。ただ、ソルベント・クラックにはかなり弱く、シンナー分に浸けっぱなしにしておくと無数のヒビが入って滅茶苦茶折れ易くなるので注意が必要である。この辺りの内容については、「とにかく正確に計量すべし!」の一語に尽きる。尚、MGパールの代用品としてマニキュアを紹介しているが、これの商品写真は、編集まかせにしたら、虹彩色の物を使われてしまった。この件を指摘した読者はいないのだが、本人としてはかなり気になっている。
 
このページでは1番下の写真キャプションに大きな問題がある。この写真は、シルバーには黒味が混ざっている事を説明する目的で、シルバー地と、白パール地、それぞれの上から「全く同じ」クリアピンクを吹いた物なのだが、その1番重要な点が抜けてしまっているのだ。これでは只、オレンジと茶色のパーツが並んでいるだけの写真になってしまう。「シルバー地に」と「クリアーピンク」の間に、「全く同じ」を補足して読んで戴きたい。
 
50ページ。本講座中最大の問題点である。右上の退色見本写真であるが、殆どの読者がこれを見て誤解してしまったらしい。
 
誌面で何かを伝えるには、とにかく派手な効果、インパクトのある写真が重要なので、わざわざ1番派手に退色していた物を使ったのだが、10月号講座でも書いた通り、これには一切マーカーインクは使用していないのだ。
 
私としては「蛍光色において顕著」と書いた事で、この写真は蛍光色の退色見本、と説明したつもりになっていたし、作例のゲルググではマーカーインクのピンクが全然退色していないのだから判ってくれるだろうと思っていたら、こちらに帰ってくる反響では、10人が10人、あれをマーカーインクだと思い、「怖くて使えない」と言ってくるのである。
 
さぁこれには困った。マーカーインクはオーバーコート法のキーポイントであるだけでなく、事実上、クリアカラーを使った技法には全て応用出来る汎用性の高い材料だ、と意気込んで紹介したのにこれでは逆効果である。10月号講座が決まった時点で、とにかくこの件に関するフォローだけは絶対カットしないで欲しい、と申し出たのだが、他の内容との兼ね合いもあり、あの程度の扱いになった訳である。果たしてこれで誤解を解く事は出来たか、多少の不安は残る。
 
ピンクのパーツがごちゃごちゃと写っている写真では、基本的に金賞ザクのカラーテストで作ったテストピースだけを使っているが、誌上では同じ色のパーツが沢山あるだけにしか見えず、計らずもこの塗膜構造の写真、印刷での再現性の低さを証明した形となってしまった。
 
51ページ。右上のゲルググが、実は第1回オラザクに応募しながら全くカスリもしなかった事は、当展示会ではご存知の方も多いと思う。この記事での登場は個人的なリベンジでもあったりするが、元原稿にも書いておいたこの件は、当然の如くカットされた(こちらも最初から「切られるだろう」と思って書いたので何と云う事もない)。
 
尚、これとキュベレイは、人手に渡っていた物をこの記事の為にわざわざ貸し出して戴いたのだが、久しぶりに見たゲルググは、保存状態が良かった事もあるが、予想に反して全く退色しておらず、マーカーインク(特にレトラセット製品)の耐光性の高さを確認する事が出来た。
 
着色パール法では記述上問題がある所はあまり無いと判断しているが、ここで書いた工業用の調色用原色が欲しい、と云う問い合わせがいくつかあった事を報告しておく。あくまでも推測にしかすぎないが、これらの問いは予てから私が「魔法の回答症候群」と呼んでいる物ではないか、と思っている。
 
何か、自分の常識から外れた結果を提示した人間は、その結果を何らかの未知の新材料や、新技法、新工具等によって得ていると考え、それら「魔法の回答」さえ使えば、自分にもすぐ同じ事、新しい事が出来る、と考えたがる人がかなり多くいる。私も今まで、各所で展示を行う度にこの手の質問を受け続けてきたし、実は皆さんも似た様な経験はしている筈である。
 
例えばスクラッチ作品を展示していたりすると、「どうやって作ったんですか?」と聞かれた経験はあると思うが、この質問は少なからず、「魔法の回答」を求めている事が多い。で、当然そんな物はある訳もなく、「ただ、塊から形を作っていっただけです」と答えると、なにやら不服そうな顔をして去って行くのである。
 
メジャーな商業誌なのではっきりと書く事は遠慮したが、モデラーズ・カラーの原色と云うのは、おそらく調色用原色をそのまま小分けしただけの物だろうと推測している。それらの人々にはこの旨を返信したが、多分彼等が納得していないであろう事は想像に難くない。
 
身近な事で言えば、現在でも、「MGパール」を、「魔法の回答」である、と誤解している人はまだまだ多い様だ。あれが従来の模型用パールに比べれば革命的に微粒子なのは確かだが、逆に言えばそれ以外には従来のパールとの違いはないと言って良い。多量に混ぜれば却ってツヤは出難くなる、等の欠点も従来品そのままなのだが、単純に、私の仕上りはMGパールのおかげ、と思いたがる人は後を絶たない状態である。
 
尚、オーバーコート法においてはあれほどマーカーインクをプッシュしておきながら、着色パール法には、読者に多くの負担を強いる事になるにも関わらずモデラーズカラーの原色を奨めているのを不信に思われる方もあるかも知れないが、確かにこの点については私の好みが強く出過ぎたと言えるだろう。
 
この場合、私は耐光性ではなく、重ね塗りにおける滲みを嫌った、と云うのが最大の理由である。そこを問題にしないのであれば、色バリエーションと云う点においては、マーカーインクの方が遥かにお手軽な事は間違いない。
 
モデラーズカラーに限らず、原色だけで微妙な色を作ろうとすると、それこそ「300:7」なんてトンでもない比率が当たり前になってしまう。重ね塗りさえしなければ滲みの問題も起きない事を考えると、着色パール法にもマーカーインクを奨めておく方が、この技法の普及には正解だったか、と後悔している。
 
52ページ。またまた当展示会常連の方々にはお馴染みの作例であるが、こちらはあれ以来全く手を加えてはいない。模型誌の〆切りペースで作例を4つ揃える事は私には不可能な為、この記事は作例に関しては「リサイクル記事」となってしまい、そこが弱みともなっている事は否定出来ないと思っている。
 
虹彩色パールについては、私が知る限り模型誌においては最初の本格的記述でもあり、この程度のスペースでは満足な説明は望めないのだが、「8ページ」と云うのは動かし難い枠であり、その中で最低限必要と思われる事柄に絞って説明せざるを得ず、当然不備は多い。
 
先ず、この説明では、虹彩色パールだけがチタニウム・マイカ系のパールである様に誤解されかねない表現になっているが、現実問題として、現在一般ユーザーが入手できるパールは全てチタニウム・マイカ系と言って良い状況である。虹彩色パールは、その中のバリエーションの1種なのであり、こういった点も含めて、読者からの反響、イベントでの質問等を聞くと、まだまだこうした基礎的な認識が浸透していない事に改めて気付かされる。
 
身の回りにおける虹彩色パールの使用例として化粧品を挙げておいたが、元原稿にあった具体例はカットされている。昨年あたりからだったか、「カップに色が着かない、色落ちしないリップグロス」と云うのが製品化されているが、どうやらこれの発色剤が虹彩色のレッドタイプの物らしいのだ。下地が肌の場合は殆ど発色しないが、唇の様に赤みが強く、明度が低い部分では赤く発色する、と云うメカニズムらしいが、さすがに自分で試した訳ではないので、実物が身近にある、と云う方に人柱をお願いしたい所である(女性モデラー歓迎)。
 
尚、元原稿では、「この先PGパールとかHGUCパールはもう出ません」と書いておいたのだが、幸か不幸かカットされたおかげで、MG、FGパールが「PREMIUM GRADE」にヴァージョンアップ出来た、と云う経緯もあったりする。
 
53ページには、現時点で大きな問題は見つかっていない。FGパールの色見本は足首パーツが白地と黒地、太腿部パーツがグレー地となっているが、特にグレー地に関しては、虹彩色パールの特徴が割とよく出ていると思う。
 
虹彩色同士の混色はNG、と書いたが、これはあくまで私はやらない、と云う事。芸風の違いもあるので断言はできないし、現にボークスのファクトリー製展示完成品では、当たり前の様に虹彩色パールの混色が行われており、そのカラーレシピも公開されている(アウゲ辺りが代表的な例)。発色原理さえきちんと理解していれば、あとは各人の好み次第とは言えるだろう。

(補足2)
最初にライターをやると決まった段階で、編集サイドからは、「あの塗装法、『MAX塗り』みたいな判り易い呼び名があると良いんですけどね」と云う主旨の事を言われていた(まぁ、編集サイドとしては当然考える事ではあるでしょう)のですが、それはカンベンして貰っていました。ああ云う名称は「結果」として自然発生的に産まれるものだと思いますし、「MAX塗り」と云うのもそう云う経緯で定着した呼称です。実際にも私の名前が略称に馴染まなかった事もあり、結果的に「~塗り」的な名称が産まれなかったのはご存知の通りです。
 
さて、とりあえず決まったとは云え、「オラザク特集」に講座の1.下地作り編として想定していた内容を組み込む、となるとやはり違和感は大きく、また記事自体にも、「華」がありません。これを少しでもスムースに特集の主旨に馴染む様にしたい、と考えて、その結果捻り出したのが、「ポジティヴ素組み」と云うキャッチフレーズでした。「オラザク」への方法論の1つとして、「素組みを積極的に捉え、それを土台として徹底的に仕上げを追求する」と云う方法論を提案する事によって、私の技法解説が「オラザク」特集の中でもある程度の意味を持つ事が出来るのでは?と考えた訳です。
 
結果的にこれがオラザク特集に組み込まれる事はなくなった為、当初の私の考えからすればこの言葉は全く蛇足であり、使う必要はなかったのですが、編集サイドにしてみると、「~塗り」と云ったキャッチフレーズのない私の記事には便利な言葉だったらしく、5月号、10月号の両講座の編集リード文に大きく使われる事になったのでした。
 
紆余曲折を経て形の見えてきた講座記事ですが、最低限必要な情報量を考えると、従来のHJ誌通常記事に比べてページごとの文字数がかなり多くなる事は避けられそうにありませんでした。こちらの原稿段階でできる限り内容を切り詰めるのは勿論でしたが、それでも文字数がオーバーしてしまった場合にはなるべく内容を削る方向ではなく、文字級数を落とす等の方法で出来る限りの情報を詰め込むと云う、普段のHJ誌スタンダードからは逸脱する方向性をお願いしたところ編集長の英断によりGOを戴く事ができ、その結果が5月号講座になった訳です(いや~、それにしてもこうしてまとめてみるとなんて生意気な「新人」なんでしょうね。8ページ貰えるだけでも破格の扱いなのに…。関係者の皆さん、色々ワガママを申しました事、どうかご容赦ください)。
 
以上の様な経緯があった事から期間的には決して恵まれた状況ではなかったのですが、やはり最低限の「華」と云うか「フック」として作例はあった方が良いのは間違いありません。その場合、1.下地作り、2.オーバーコート法、3.着色パール法、4.虹彩色パール、それぞれに1つずつ全部で4つの作例が必要になりますが、下地作り編には当初の予定通りフェラリ・ガンダムを使うにしても、残り3つ新作を揃える事は、他のライター諸氏ならともかく、私には絶対不可能です(自慢してどうする)。
 
担当して戴いたTK氏からは今回の講座は作例なしで行きましょう、と言われていたのですが、打ち合せの後で2、及び3の作例については、過去に作った作例がそのまま使える事に気付きました。
 
ある時期までの作例ではオーバーコート法しか使っていなかったのでどれでも使える(実際、最初はキット発売時に製作していたMGジョニーライデン06R2を使うつもりでした)し、着色パール法も、最初のテストケースだったHGUCキュベレイがそのまま使えます。
 
虹彩色パールには、「ありもの」はなかったのですが、この時、丁度GMクウェルが塗装直前までの作業を全て終わった状態でしばらく放置してあった所でした。これは元々金賞ザクと同時期に平行して手を付けていた物で、最初から「あの色」に塗るつもりだったので、虹彩色パールの作例には最適です。これ1体の塗装とカラーピースの塗装だけなら、期間的にもなんとかなりそう。早速、人手に渡っていたHGUCキュベレイと、MGゲルググの持ち主に連絡をとり、撮影に貸し出して貰う許可を戴いて、幸運にも4つの作例を揃える事が出来たのでした。

 続いて10月号講座であるが、これを書いている時点では反響が余り届いていない事もあり、とりあえず自分で気が付いた事柄についてだけ述べるに留める。
 
まず67ページ3段目右側の写真キャプション。「アートナイフ」ではなく、「デザインナイフ」が正解である。模型誌の常識から言えば間違いの内には入らないだろうが、以前から本稿で、「アートナイフ」と、「デザインナイフ」は別物なんじゃぁ~、と吼えている手前、この辺ははっきりしておく義務があるだろう。ちなみに、真中の写真では、左端が、「デザインナイフ」、右2つが、「アートナイフ」となっている。下段左端の図解では、かなり鈍角な刃付けをする画の描き方になっているので、整形前、整形後が逆なのでは?と思われる向きもあるかも知れないが、これは写真キャプション通り、右が加工前、真ん中が加工後で正解である。
 
左端のマスク装着写真については…、編集長の趣味、としか言い様がない。最近のHJ(特に講座系記事)にやたら本人写真が多いのはそのせいらしい。だから「あの写真は何?」と聞かれても、こちらはただ言われた通りにポーズをとっただけなのである。元々私は写真自体好きではなく、この10年近辺で写真を撮られたのも片手で余るくらいの回数なのだ。実は一連の本人写真を1番嫌がっているのは私自身なのである。
 
2段目写真で紹介しているピンセットは、前回本稿でも紹介した物。メインで使っているRUBIS社の6saは、東急ハンズでも在庫してない事が多く、今回撮影したのも注文で取り寄せて貰った物である(先代は、不注意の結果、腐海に飲み込まれてしまった)が、何と国内に在庫がない、との事で船便で取り寄せと相成ったのだった(最悪3ヶ月、と言われたが、1月ちょっとで来た)。
 
その上の、「アイボーイ」及び、「フタ付き計量カップ」は、商品化検討中と書いたが、反響が少なければそのまま、の可能性が大きい(便利な商品なんだけどね~)。
 
68ページ中段右写真。前回の本稿でも書いたが、結局昨年展示会終了直後に、「コラーニ」、「エヴォリューション」をオプション付きでまとめて買ってしまった(当会メンバーK林氏曰く、「ハンドピースを大人買いする人は初めて見た」)。
 
これはコンテスト賞金の有効活用として買った物で、結果としては大正解だったと思っている。記事に書いた、「同圧力で、霧のあたりが柔らかい」と云うのが最大の特徴だが、それ以外にも、「適度な軽さ」、「上カップで洗浄がし易い」、等長所は沢山ある。持ちにくいのでは?と云う危惧を持たれる方も多いかも知れない(特に「コラーニ」)が、長時間に渡る塗装を連日続けてもエアブラシ形状による疲れは、少なくとも私にはなかった。
 
この写真に関して、持ち方、パーツとの距離等に嘘はない。ただ、塗装作業の進み具合や、パーツの大きさ等によって、多少距離が離れる事はある、と云う点だけは言っておく。
 尚、「親指の爪」については当会メンバー、及び当展示会常連諸氏は既にご存知だろうが、世間的にはやはり違和感は大きいだろう。
 私としては、完全に技法の1部と化してしまっているので、これがなくなると作業自体が出来ない、と云う所まで来ており、アクシデントで短く切らざるを得なくなった時の為に、ギターのフィンガー・ピックに付け爪を貼りつけた非常用の工具まで用意している。1度、まるまる切らなければいけなかったので、仕方なく瞬着で貼り付けるタイプの付け爪を直接貼っていた事すらあるのだ(やってみると判るが、これは爪の健康には甚だよろしくない)。
 まぁ、いくら雑誌に載ったからといって、こんな事まで真似しよう、と云う方が1人でもいるとは思えないが、一応念の為に言っておくと、日常生活にも多大な不便を伴うし、少なくとも、「学校で体育の授業がある」と云う方は絶対マネしてはいけない、とだけは言っておく。
 
69ページ。5月号講座について書いた箇所でも述べた退色についてのフォロー記事だが、MGゲルググ自体が’96年末発売なので、「6年」と云うのは完全に私の記憶違い、せいぜい5年程度になる。
 
70ページ。上段中央のパーツ最終状態写真であるが、少なくとも私の手元にある雑誌の印刷では、この写真の色が実物に近い。
 
最下段のザクは当展示会でもお馴染みの作例である。これはどちらかと云うとついでに撮った写真だったので、使われないだろうと思っていたのだが、たまたま撮影の時に良いポーズが付いたので、そのおかげもあって採用されたのだろうと思っている。シールド、肩アーマー部のマーキングはネイルアート用のデカールを使用。マニキュアや、工具としての付け爪を捜した際の副産物であるが、これがフィルムも薄く、滅茶苦茶優秀なデカールであった(作例ではクリアコートもしていない)。ドンキホーテで購入したと記憶しているが、最近では見かけなくなっているのが残念。
 
隣の写真で解説している自作研磨布であるが、要は「空磨き」がポイントである。通常のコンパウンドでは、スジ彫りや奥まったディテールに白く残ってしまい、特に私の様にスジ彫りを細く深く切り直している場合、これは致命的とも云える欠点である。その為に空磨きをする必要が出来たのだが、最初は「ポリマール」や、「ハガティ・シルバーダスター」といった、「研磨粒を含侵させた不織布」を使っていた。 効果は充分だったのだが、MGキットを磨くにはかなり消費ペースが早いと云う問題が出てきて、この対策として、キッチン・ペーパーを使った自作を始めた訳である。液体コンパウンドは、紹介した以外にも適当な物はあると思うので、各自入手できる物でも構わないが、「#9800」に相当する超仕上げ用コンパウンドの選定は難しいかも知れない。とりあえず模型用商品としては、ワークの「マディカル1」をお奨めしておく。

(補足3)
5月号講座を終え、いよいよ本来の目的である、「金賞ザク」構造の解説をやる事になるのですが、これにあたっては、早い時期から、「作例はサザビーで」との希望を伝えてあり、5月号講座UP後には実際にカラーテストにも入っていました。

  ところがこれが大誤算、いくらテストを重ねても、全然イメージした様な色が出ないんです。サザビーであるからには、「鮮やかな赤」でなければいけない、と云うのが大きな基本方針としてあったんですが、テストを重ねる内に、金賞ザク構造自体が、「鮮やかな赤」に全く向いていない事がハッキリしてきてしまったんですね。

  とは云え、「サザビー」と指定したのはこちら側、今更「色が出来ませんでした」とは中々言い出せるモンじゃない。かと云ってサザビーをピンク色にするのも嫌。ほとほと悩んだあげく、恥をしのんで作例変更をお願いし、その結果多少の空白期間が空く事になってしまいました。

  この時期1番の有力候補で、実現直前まで行ったのが「MG百式」。これに金賞ザクと同じ色を塗ってしまおう、と考えた訳です(またまた、「赤く塗ってシ{以下自主規制}」)。

  そうこうしている内に、9月号合わせの時期も過ぎてしまいます。以前から、「11月号はJAF-CONコンテスト発表があるから、講座的なイレギュラー企画は入れられません」と聞いていたし、いくら何でも金賞受賞から1年以上経ってしまってはマズイだろう、と云う事で10月号は実質上のタイムリミット。編集部との話し合いにより、10月号で6ページの講座枠を戴ける事になりました。

  この時点で既に「MGキュベレイ発売決定」の報は流れており、当方としても10月号講座には強くこれを作例候補として希望したのですが、テストショットが届く時期が遅く、私の製作ペースでは10月号〆切りには到底間に合わない事が判ってあえなく挫折しました。

  代りに編集サイドが提案して来たキットは、HGUCジオングかMGRe-GZのどちらかと云う案。実質上この2つ以外に選択肢はなかった状況で、このどちらかを選ぶしかありません。

  ジオングは基本色が無彩色のグレーであり、各層の色相のずれを利用する金賞ザク構造には向かないのに比べ、Re-GZは青系の弱緑で、これは色だけで見れば金賞ザク構造には充分適していると云え、この2つしかないのであれば、と、BWSはオミットする条件でRe-GZを選ぶ事になった訳です(今考えると「ジオングを赤(略)」って案はなんで出なかったんだろう…)。

71ページ。記事最後のHPアドレスが、メールアドレスと繋がってしまっている為、次号で訂正を入れて戴いた。
 
当記事、及びHJ記事の内容に関する質問、ご意見、報告等は当HP会議室でも受付ているので、書き込みをお待ちする次第である。

リターダー(Retarder)

 リターダーと云う名前は殆どの方がご存知だと思うし、一応、「ツヤを出したい時や、湿度が高い時に塗料に混ぜる」と云う事も知られているとは思うが、その原理や具体的な機能、用法についてはあまり知られていないと言って良いのではないだろうか。ここでは、基本原理から、使用法、更に応用も含めて解説してみる事にする。
 
リターダーとは、一言で言ってしまえば、「極端に乾燥の遅いシンナー」である。適量混ぜる事によってシンナーの蒸発速度を遅らせる事ができる訳で、これによってツヤだし効果が出る事は理解して戴けるだろう。「カブリ防止」と云うのも同じ事である(以前本稿で書いた、「湿度」の項を参照されたい)。
 
一般に、ラッカー塗料と云うのは、他の塗料に比べて塗料自体の粘度が高く、それを下げる目的で多量のシンナーを混ぜる必要がある為、シンナーの蒸発速度も早めに設定されており、ラッカーの2大欠点である、「肉持ちの悪さ」、「カブリが起き易い」と云うのはどちらもこれを原因としている。「肉持ちの悪さ」と云うのは、模型塗装においては「精密性の高さ」として利点と解釈出来るのだが、「カブリ」に関しては決して歓迎する事は出来ない。その結果として、模型用塗料にもリターダーが必要となるのである。
 
「Mr.リターダー・マイルド」は、実質上1種類だけの水溶性アルコール系有機溶剤を成分としている。この溶剤はNC系、アクリル系を問わずラッカー用リターダーの主成分として最も多く用いられる物質である為、現実問題として、全ての模型用ラッカー系塗料にリターダーとして使用する事が可能な筈である。
 
あまり語られない事ではあるが、実際にリターダーを使う際、どれくらいの比率で混ぜれば良いか、と云う疑問を感じた事はないだろうか?少なくとも、模型誌上でこれに対する明確な回答を見た覚えはないのだが、とりあえずここでは私の解釈に基づく回答を書く事にする。
 
私は、リターダーとは、「シンナーの蒸発速度を調節する」物だと思っている。模型界では殆ど知られていないが、本来ラッカー塗料用のシンナーには、使用温度条件に合わせた蒸発速度バリエーションがあるのが常識で、大抵、「春秋」、「夏」、「冬」それぞれの季節に合わせたシンナーがラインナップされている事が多い(「Mr.レベリング・シンナー」と云うのは、こうしたバリエーションの1つと言って良いだろう)。
 
この考え方から行けば、リターダーは「塗料に対しての比率」ではなく、「シンナーに対しての比率」で混ぜるべきである事がお判り戴けるだろう。比率自体は、温度や湿度等によって変って来るので一概には言えないが、私は大体、シンナーに対して5%前後(最大でも10%)程度の範囲で混ぜる事が多い。ただこの、「何%」と云うのもクセモノで、「シンナーの原量に対して」なのか、「リターダーを混ぜた後の総量に対して」なのか、と云う問題が出て来るのだが、これは各自好きな方を採用すれば良いだろう。私は、計算は面倒になるが、後者を採用している。[ 註1 ]

例えば、5%添加する場合だったら、前者においては、「シンナー100部に対して、リターダー5部」と云う比率。後者の場合は、「シンナー95部に対して、リターダー5部」になります。

では、応用編として1つ。これはHJ誌上で書こうと思いつつ、いろんな意味で危険性がありすぎるので止めた内容なのだが、「水にMr.リターダーを加えて、デカール軟化液を自作する」」と云う物である。
 
「え!?」と思うだろうが、先にも書いた通り、Mr.リターダーは「水溶性有機溶剤」なので、水に混ざるのだ。
 
実は5月号講座にも載せたフェラリ・ガンダムは、全てこの自作軟化剤でデカール貼りを行った物である。展示会直前になって軟化剤をきらしている事に気付いたのだが、以前から某社の軟化剤の臭いがMr.リターダーと同じである事に気付いていたので、もしや、と思ってその場でやってみたら見事に使えたのである。
 
この時は、水10:リターダー1の割合で混合したが、混合比を変える事で、強さも調節出来る。ただ、厳密に混合比を管理しないと、一寸濃くなっただけでデカールは勿論、塗膜まで溶けたりするので細心の注意を必要とする事はお断りしておく(事故があっても責任は取らないからね)。
 
さて、水に溶ける、と云う事は当然水性塗料にも使える、と云う事でもある。「そんな事して何のメリットがある?ただでさえ乾かない水性アクリルが一生乾かなくなるだけだろう」と云う意見は当然に思える。しかし良く考えるとそうじゃないんでは?と云う事を最近考えているのだ。
 
水性アクリル(特にグロス)が何故乾燥しないか、と云う理由は、これがエマルジョン塗料である所に原因がある。この場合、水は樹脂分を分散しているだけで、それ自体は樹脂に対する溶解力を持っていない。水が蒸発する事によって樹脂分同士がくっつき、それによって塗膜が形成されるのだが、大抵、乾燥は表面から始まるので、塗料に厚みがある場合、一旦表面で塗膜が形成されてしまうと、中に閉じ込められた水分は、塗膜の樹脂を溶かす事が出来ないため、結果として外に逃げられなくなるのである(水性アクリル特有のいわゆる「血マメ」状態がこれの典型例)。
 
さて、ここで、Mr.リターダーが混ぜられた場合を考えてみると、これはアクリル樹脂に対して溶解力を持っている筈である。だとしたらこれが水の逃げ道を作ってくれる、と云う事にはならないだろうか?沸点も水に比べてかなり高いので、水が抜けきる前に蒸発してしまう事もないだろう。つまり、適当な混合比さえ見つければ、「Mr.リターダー混入によって、水性アクリル塗料の乾燥を早める」事が可能なのではないか?と云う事を最近考えているのだ。[ 註2 ]

具体的な比率については、実際に試していない現段階では推測のつけようもありませんが、ドーピング率がかなり低くなる事も予想されます。添加率が1桁台前半くらいになると正確な計量は難しくなりますが、その場合はまずリターダーを、エチル、メチル等のアルコールに一定量添加しておき、そのアルコールを塗料に混ぜる、と云うやり方が適当になると思われます。

例えばリターダーを10%含むアルコールを使うと、その添加率のさらに1/10のリターダーがドーピングされる事になるので、それだけ精度を上げる事ができる訳です。

現状これは私の脳内でしか成立していない。また、私自身は水性塗料を使う必要がないので、自分で実験する気もなかったりする。どなたか、模型界発展の為の人柱になろう、と云う奇特な方はいらっしゃらないだろうか?[ 註3 ]

様々な理由から、現状より性能の良い模型用水性塗料を望む声は今もあちこちで耳にします。モデルマスターのパック入り水性塗料は一部で話題になりましたが、パッケージの問題で供給されなくなってしまったと聞きました。

実務塗装業界でも主に環境への配慮から、高性能な水性塗料は求められており、環境基準の厳しいヨーロッパを中心として研究は進んでいるようです。原料メーカーのレベルでは既に、エマルジョンの粒度を超微粒子化する事によって飛躍的に性能の向上した水性塗料は開発されています。しかし日本ではまだ、それらの原料を使った塗料の商品化はごく一部で始まったばかりのようで、1昨年のペイントショーでも実際に販売される商品としては自動車の下地用塗料がいくつかあった程度で、後は開発途中の塗装サンプルがショーモデルとして展示されているだけでした。