欠陥模型大百科・望外僥倖版
ENCYCLOPEDIA MODELLICA “Windfall” version
Private Edition Ver.9.0
石川雅夫(MMI)
第11回モデラーズ・スペース展示会(2000年)
お使いになりますか? (Would you like it?)
今年も又、モデラーズ・スペース展示会の季節がやって来た。
こうして又このページをお届け出来るのは真に喜ばしい事であり、皆さんには今回も、この読みにくい原稿にお付き合い頂く事になる。
今年は私にとって、色々と大きな事件があった訳だが、「例の件」については別稿を設けたので、そちらで詳しく述べる事にする。
尚、今回は従来に比べて文字が大きい事に気づかれた方も多いかと思う。 「内容の水増しだ!」、「不当表示だ」、「期限切れ商品を原料に再利用している」、「私は日本人でも黒人でも無いのに下痢をした」、「粉ミルクにヒ素が入っていた」等々のご批判があるかと思うが、今回は編集担当のT谷氏から、8枚書いて欲しいと云う要請があったのだ。
従ってトータルでは1割増(当社比)になっているので、ご承知願いたい。[ 註1 ]
この部分はパンフレット誌面の読者だけを対照にした文章であり、Webで読まれている方には全く意味はないのですが、一応そのまま再録してあります。 |
これで少しは読み易くなればとも思うが、内容的な読み難さは全く変わってはいないので悪しからず。
さてここからはいつも通り、以前の内容のフォローと、新製品情報になる訳だが、まずは「ピンセット」について。以前本稿で、ホコリ対策について述べた時、一番重要なのは高精度のピンセットを使用する事であり、それ以外に道は無いとまで言いきった。
現時点においても基本的にこの考えは変わってはいないが、これを書いた時点では、具体的な商品例を紹介出来なかった。最近になっていくつか目に付いた物があるので、紹介してみたい。
一つは、ボークスのショールームで扱っている、「INOX」と書かれたパッケージで売られている物で、どうやらドール用の工具として入れた様だ。これは以前、TOOがバニー・ブランドで出していた物で、実は私が最初に買ったのもこいつだった。
前回もこれを紹介しようと思っていたのだが、数年前からTOOの店頭では見掛けなくなり、とっくに絶版になったとばかり思っていたら、パッケージも全く同じ物とボークスで再会したのである。形式はいくつかあるが、以前にも書いた通り、先が曲がったタイプ(2,900円)をお勧めする。[ 註2 ]
最近では、タミヤやグンゼ(GSIクレオス)等から、「精密ピンセット」と称する商品が出ていますが、いずれもホコリ採り用途に使えるだけの精度は持っていません。
これらを買うくらいだったら、グット(GOOT)製、480円のピンセット、の方がお徳でしょう。この価格ですが、研ぎ直せばホコリ採りにも充分使えます。 また、イエローサブマリンで取り扱っている「Pro’sKit」と云うブランドもグットと同価格帯ですが、研ぎ直し前提のベースには最適です。 |
どうやらピンセットには番号に対応した定型があるらしく、ある程度以上のクラスの商品には必ず本体に形式を表す番号が打ってある(私がお勧めした形は「7番」になるらしい)。
商品名は「バニー・イノックス・超精密ツイーザー」だが、実はメーカー名は全く別。
「バニー(BONNY)」は販売元の名前だし、「イノックス(INOX)」はステンレスの国際名称なのだ(スイスアーミーナイフで有名なナイフメーカーにVICTORINOX社があるが、これが創業者の母親の名前であるVICTORIAに、ステンレス製であると云う意味でINOXをくっつけた社名だと云うのは有名な話)。私の手元にある物を見ると、製造元は世界的な精密工具メーカーであるスイスのDUMONT社で、品質的には市販品の中ではトップクラスと言って良いだろう。
現時点でこのDUMONT社のピンセットは、東急ハンズ渋谷店の彫金コーナーでも扱っていて、こちらでは青く塗られた物と、緑色の物の二種類がある。
この二つの違いは、素材が防磁性であるか無いかなので、ホコリ採り用には値段の安い、青い物の方が良く、価格は2,340円である。ちなみに現在私がメインで使っているのは、スイスRUBIS社製の6saと云うタイプの物。これも渋谷ハンズで買ったのだが、最近見掛けなくなっていて、一寸不安を感じている。[ 註3 ]
2001年版でも書きましたが、この6saは、どさくさに紛れてどこかへ紛失してしまいました。
形状的にもベストで、メインとして使っていた物だったため、急遽ハンズに取り寄せを依頼。それが来るまでの間は、DUMONTの方でしのいでたんですが、いざ到着した新しい6saはどうも、「ハズレ品」っぽく、新品をいきなり研ぎ直す事になりました。 |
さて、ホコリ採りの必需品がピンセットならば、塗装その物の必需品として、「防塵マスク」をやはり以前に紹介した事がある。当時私が推奨した1010タイプ、及び1005タイプは、性能は申し分無いものの、価格が高い事、そして取り扱い店が少ない事がネックだったが、 最近になって、思いがけない場所でこれらを見つけたので報告する。
関東近県在住の方ならば、幹線道路沿いに「ワークマン」と言う作業着専門チェーン店があるのを見かけた事があると思う。この店が上記の二つのマスクを扱っていて、しかも今まで私が見た中で一番安く売っていたのである(以前に紹介した価格からそれぞれ1,000円近く安い)。
ウチの近所の二店ではどちらにも置いてあったので、基本的に全店舗で扱っていると考えて良さそうだ。ちなみに、1010タイプは農薬散布用、1005型は溶接作業時のヒュームミスト用が本来の用途だそうである。[ 註4 ]
HJ誌2001年10月号講座で紹介したマスクは、「6005R」。「防塵マスク」の項で註として紹介した、「マスクのHP」で購入しました。
このHPでは、1010型、1005型どちらもワークマンよりさらに安い価格になってます。 URLは以下の通り。 |
続いては前回「エアブラシ」について書いた時に触れた「AZTEK」のハンドピースだが、その後の各方面からの情報を総合すると、どうやら「使えない」と云う結論に落ち着きそうである。簡単なパーツ交換でノズル口径が変えられる、と云う理由から注目した訳だが、肝心のエアブラシとしての使い勝手にかなりの問題がある様なのだ。「軽すぎて安定感に欠ける」、とか「宣伝文句で言うほどには洗浄は楽では無い」、「とにかく安っぽい」等良い評判を聞いた事が無いのである。今までエアブラシを全く使った事が無い人なら、結構便利に使いこなすのかも知れないが、乗り換え組には違和感がかなり大きいらしい。[ 註5 ]
この辺の評価は当然の様に人によって様々で、特にNet上では結構良い評判も見かける事があります。 |
さて、ここからなし崩しに新製品紹介へとなだれ込んでしまうのだが、やはりノズル口径が変えられる機能を持ちながらも、本格的な構造のハンドピースを見つけたので、ここで紹介する。
最近、東急ハンズのデザイン売場で、トンでもない格好をした「ルイジ・コラーニ」デザインのハンドピースを御覧になった方も少なからずいるのではないかと思う。
これはドイツの、ハーダー&ステンベック(HARDER & STEENBECK)社の製品で、その名もズバリ「コラニ(COLANI)」(まんまやんけ!)と言う。
形状は正に「コラーニ節」全開の物凄いデザインだが、さすがイタリア・デザイン、実際に持った感じはなかなか良いし、ボタン式としては疲れにくそうな所も好感が持てる。
良く見ればエアブラシとしての心臓部はしっかりした物だし、見た目の割には結構実用品っぽいのだ。
価格も22,000円と、最近のオリンポス製品に比べればリーズナブルと言えるだろう。 ただ、AZTEKと違って替えノズルとのセット売りではないので、あれに比べれば高いと云う意見はあるかも知れないが、AZTEKとは違うレベルの製品、と云うのが私の見解である。
0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.8mm,1.0mm、1.2mmと6種類の口径オプションがあり、基本セットには、0.4mmが付いている。交換用のノズル・セットは、0.2mmが4,800円、それ以外の口径は、4,000円となっていて、これが高いのか、安いのかは比較の対象が無いので何とも言えない所だが、私が以前パーツ交換で口径変えをやった時には、もう少しかかった気もする。
乱流対策で穴の開いたニードルキャップも魅力的だし、実を言うと私はほとんどこれを買いそうになったくらい気に入っているのだが、唯一踏みとどまった理由は、ニードル・アジャスターが無い事である。
正確に言えば似たような機能はあるのだが、塗装中に調整するのはほとんど無理。
これは私が現在考える用途には致命的なので、これが判明した時点で導入は諦めた(勿論これは全く私だけの事情であり、ニードル・アジャスターなど要らん、と云う方には、ノズル口径以外にもオプションは豊富だしオススメである)。
さて、ここで浮上して来たのが同社の別の製品、「フォーカス(FOCUS)」と「エヴォリュ-ション(EVOLUTION)」と云うタイプ。
こちらは「コラニ」とは違い、見た目は至ってコンヴェンショナルなダブルアクション・タイプだが、これも、0.2mm、0.4mm、0.6mmと3種類の口径オプションがあるのだ(「コラニ」用の物と共通パーツ)。
模型塗装用だったらこれだけで充分だし、何よりもこちらには、オプションながらニードル・アジャスターが付く。
「フォーカス」が0.2mm口径で10,900円、「エヴォリュ-ション」には2種類の口径がセットで入って15,500円と、価格的にもリーズナブルと言える。
「フォーカス」ならばニードル・アジャスターを付けても13,700円であり、これは0.2mmで穴開きニードル・キャップの付いた物としては、最低価格帯といって良いだろう。
以上の様に、製品自体には今の所何の問題も見当たらないのだが、最後の一歩を踏み出せない理由としてアフターケアに関する不安、と云うのがあるのだ。
こう言う新来の輸入品と云う奴はえてして供給が不安定である事が少なくない。
先日もレトラセットのコンプレッサーで一騒ぎあったのは記憶に新しい所で、他にもハンブロールなんてメジャーな塗料ですら、割と安定して供給される様になって来たのはここ数年の事である。
ハンズでもこの辺の所をツッ込んで聞いてみた所、「ウチでは取引を開始する際に、相手先を審査する事になっているので怪しい会社ではない筈、大丈夫です」との回答。
まぁ会社その物が存続していても、方針が変われば即打ち切りと云うのは良くある話なので不安が消えた訳ではないが、ハンズだけでは無く、TOOでも取り扱っている事が判ったので多少は安心、と言った所か(世界堂で扱ってないのが残念!)。
展示会当日には、「新しいエアブラシ買っちゃってさー」と吹聴して廻っているかも知れない。[ 註6 ]
結果はHJ講座でもご存知の通り。
展示会当日には間に合わなかったものの、終了後、「コラーニ」と、「エヴォリューション」をまとめて導入しました。 この2つを同時に買うと、0.4mmのノズルセットが1つ余ってしまうのですが、どうしても、「フォーカス」ではなく、「エヴォリューション」が欲しかった(単純に格好の問題)ため、色々問い合わせた結果、Too.から、「エヴォリューション」の0.4mmノズルを、0.6mmノズルに交換して販売OK、との回答が貰えたため、「エヴォリューション」用のニードルアジャスターと共にここで購入しました。 |
さて、塗装中のホコリ採りには最高級ピンセットが必要不可欠、と云うのは先ほども書いた事だが、はたしてこれに代わり得るか?と云う物を実務塗装業界より1つ紹介する。
毎回これをきちんと読んでくれている方なら、私が塗料店からkg単位で塗料を買う事が多いのはご存知と思うが、先日そこから塗装用品の総合カタログを貰った。
これをモデラーズ・スペースの集会に持って行って見せた所、これに載っていた「スピナ-ル」と云うホコリ採り用の針に注目が集まったのだ。
これは一見すると、5cm程度の針に持ち手が付いただけの物に見えるのだが、針の先端部1cm程に微小な逆トゲが無数に付けられていて(肉眼では殆ど確認出来ないくらいだが、拡大すると結構凶悪)、ここでホコリやゴミ或いは小さな虫、等を引っ掛けて採る道具なのである。
これは私も夏場には時々経験する事だが、バイクやクルマの補修塗装の現場は戸外である為、塗面に小さな虫が飛び込んで来て張り付いてしまう事がかなり多いらしい。
業界では「虫はシンナーの臭いに引き寄せられる」と云う説が一般的らしいが、私としては、強い照明に引き寄せられた虫が、エアの流れに巻き込まれるのでは無いかと思っている。
一組6本入りが最低のロットだったので、Y崎氏、M城氏と3人共同で買う事になり、最近になって実物が届いたばかり、従ってまだインプレを書ける状態では無いので、興味のある方は当日、本人達に直接聞いて戴きたい。[ 註7 ]
結果として、最高級ピンセットに及ぶ程の性能は感じられず、この、「スピナール」はこれ以降殆ど使わないまま現在に至ってます。 |
最後に補足情報としては、横浜にある「塗料のオカジマ」と云う店で、一本売りがあるらしい(一本700円)事が最近判った。
私の芸風と言えば、言うまでも無く、「グロス、パールの石川」であるが、数年前まではこれにもう1つ、「蛍光色の石川」と云うのもあった。
耐久性の問題で最近は余り使わなくなったが、それでも今年になってMr.カラーの蛍光色がモデルチェンジしたのは大いに気になる所である。
最初これを聞いた時は、なんでわざわざつや消しにする必要があるのか?と疑問だったが、そこまでするからには何かメリットがあるに違いない、おそらくは耐光性か、にじみのどちらかに有利なのだろう、と推測した。
モノは試しと早速入手してテストしてみると、成る程上澄みに全く色が出ず、これならにじみは起きないだろう、と思える物だった。
これは現在一般的な、蛍光染料で着色した顔料ではなく、滅多に使われない純顔料系の物をわざわざ使ったのか?だとするとグンゼも凄い事をするもんだ、と思ったがそうではなかった。
程なくMG誌に載った記事に、蛍光染料をマイクロカプセルに封じ込めた物を顔料として使っている、と云う予想外の解説が載っていたのだ。この結果確かに、蛍光塗料最大の欠点の1つだった、にじみの問題は解決していると言って良いだろう。
しかし、おかげでこの塗料は別の問題点を持つ事になってしまった。
いくらマイクロカプセルとは云え、通常模型用塗料に使われる顔料に比べれば粒子は遥かに大きい。
つや消しにならざるを得ないのも、顔料自体がフラットベース並に大きい為であり、こう云う大きな顔料を多く含む塗料は、ある特有の性質を持ってしまうのだ。
特殊塗料の一種に、「クラッキング・ラッカー」と云うのがあるが、これをラッカーの下地の上から塗ると、一面に大きなひび割れ模様が出来る。
わざと下地と上塗りの色を変えて、そのひび割れ模様を目立たせる、と云った使い方をする物なのだが、この性質は正に粒子の大きな顔料を多量に含む事による物なのである。
MG誌の記事でもひび割れが出易い事は触れられていたが、私が使ってみた感想としてこの新しいMr.蛍光カラーは、「かなり優秀なクラッキング・ラッカー」になってしまっている。
私の場合下塗りが厚めになりがち、と云う事もあるだろうと思うが、一寸でも厚塗りになると下地の白がコンニチワして来るのである。
これについては使用にあたって充分に注意しなければいけないだろう事をここに明記しておく。
長々と悪口ばかりを書いていると思われるかも知れないがそうでは無い。
にじまない蛍光塗料と云うのは長年の夢だった訳だし、それをカバーする使い方さえ工夫出来ればこれは大変有用な塗料になり得るのだ。
その為にも欠点をきちんと把握する事は重要であり、それを踏まえて初めて使いこなす事が出来る、と云う観点からあえて欠点を詳しく解説しているのである。
私は最近のグンゼ産業には大いに期待しているし、評価もしている。
それこそ、これを書いている段階ではまだ発売されてはいないが、Mr.カラーで「マジョーラ」を出すと云う話を聞いた時は大変嬉しかったが、同時に「正気か?」と思ったのも事実である。
実は前回の展示会の後しばらくの間、私は「マジョーラ」についてかなり調べていた時期があり、各方面にあたった結果、かつて当会のメンバーだった(今でもかな?)K沼氏から詳しい情報が得られたのだが、業界向けの格安のルートで、1kgあたり8万円(!!!)と云う値段を聞いて諦めた経緯がある。
つまりMr.カラーのマジョーラは、モデラーの常識からすれば、トンでもなく高い塗料かもしれないが、逆に私に言わせれば、良くあの値段で出せたものだ、とメーカーの勇気に感心するべきなのであり、この事からもグンゼ産業への期待は高まるのだ。[ 註8 ]
この後、予定通りMr.マジョーラが発売されたのはご存知の通り。実際に使って見た感想は、「あの時手に入らないで正解」と云う物でした。
確かに素晴らしい効果ですが、バリエーションが広げ難く、それに何と云ってもやはり、模型用としてはあまりにも粒子が粗すぎると思うんですね。 何より、当時これが入手出来ていたら、あの、「金賞ザク」は産まれていなかったでしょうから。 とりあえずこれについては私は手を出さず、他の方に可能性を探って戴こう、と思ってます。 |
さて、塗料関係では今年ワークから久々のヒットが出た。
すでに一部では話題になっている、「こすって銀SUN」は確かに魅力的な新製品であり、私もこれからお世話になる事は確実である。
この商品の最大の勝因は、製品をただモノ(HARDWARE)として売るだけでは無く、そこに使い方(SOFTWARE)も一緒にパッケージして、システムとして提供した所にあると思う。
実を言えば、この中に入っている「魔法の黒い粉」と云うのは、それ自体はとりたてて目新しい物ではない。
あれはおそらくグラファイト(GRAPHITE、黒鉛とも言う)の粉末であり、一番有名な用途としては鉛筆の芯の原料があげられる。
乱暴な言い方をすれば、「エンピツの粉」なのであり、さらに言うならば、Mr.メタルカラーのアイアンの中身、と云う言い方も出来る。
あれも、グラファイトを顔料に使っていると私は睨んでおり、振る舞いは全く同じ、というのが両方を実際に使い比べた感想である。
私はメタルカラーのアイアンについてはかなり使い込んでいるユーザーの一人と自負しており、あの「金賞ザク」を筆頭に、ここ数年の間に作ったPG、MGシリーズでは、インナーのメカ部分は全てアイアンの磨き出し仕上げにしている。
特にPGのインナーを全て磨きアイアンにすると云うのは、はっきり言って狂気の沙汰であり、これだけ使い込んだ経験から言っても、この2つは同じ物としか思えないのだ。
モデラー一般に流布しているメタルカラーに対する誤解として、「メタルカラーはハゲ易い」、「アイアンは光らない」、と云うのがある。
確かにシルバーやゴールドなどはハゲ易いのだが、その点についてアイアンは別物であり、かなり力を入れて磨いても滅多に下地が出る事はないのだ。
逆に粉っぽさが無くなるまで徹底的に磨き込んで初めて充分な金属光沢が出るのであり、ここまで磨いた事が無い為に、「アイアンは光らない」と思い込んでいると云うのが実状なのだ。
又、メタルカラーと云うのは全て下地の表面が忠実に再現されてしまう性質を持っている為、下地が鏡面仕上げになっていなければ、本当のメッキの様にはならない。
ここまで理解してキチンと使っているモデラーが少ない事も、アイアンに対する誤解が解けない理由の一つだろう(まぁ、その為にPGのインナーパーツを全て研磨剤でピカピカに磨いたどっかのバカもどうかしているのは確かだが…)。
この「こすって銀SUN」は、この辺の問題をマニュアルで使用法を限定する事によって解決しているのだ。
必ず下地をツヤありの黒に塗った上から使う様明記する事によって、ある程度鏡面に近い下地を確保している。
更に言えば黒地にする理由は、グラファイトは粉末で使った場合に一番金属光沢を得やすいが、そうすると下地が透けてしまう為、それをカバーする目的であり、つまりグラファイトを使って金属光沢を得る為のベストの条件を最初から指定しているのである。
このシステムが見事だった為、皆が「銀色」だと思ってしまった訳だが、正確には今書いた通り、「金属光沢を持った黒」と云う方が正しいだろう。
1つだけ注文をつけるとすれば、マスクや手袋等はいらないから、「魔法の黒い粉」だけでもう少し安く出して貰えると有難い。[ 註9 ]
この、「グラファイトの粉末」ですが、カギ業界でも流通している、と云う話を聞きました。
何でも、鍵穴の潤滑剤には油等の潤滑液は禁物らしく、古くから、「黒鉛の粉」が使われているそうなんですが、この経路からだったらもっと安く入手できるかも、と考えてます。ただ、最近では、「MICROLON」みたいなハイテク系の潤滑剤が主流になりつつあるみたいですが。 この辺、どなたか情報をお持ちの方はおられないでしょうか? なお、「こすって銀SUN」については、2001年、粗製濫造版にも記述があります。 |
例年ならばこの項は、カッターの新製品情報で始まるのが通例だったが、今年はめぼしい物が無い。
個人的には、NTの「i」シリーズ(iマッ○・カラーで一本120円のカッター)などは大ウケのネタで、全色揃えてしまった程だったが、カッターとしての性能はいかにNT党を標榜する私と言えども、とても皆さんにお勧め出来るシロモノでは無い事は認めざるを得ない。
そこでカッター情報の代わりに、今回はヤスリである。
この夏にハセガワのスグレモノシリーズから「レーザーファイル」と云う製品が出た。
一見した形は、今まで良くあったごく普通の爪ヤスリの流用品に見えるが、これは私が、かなり初期の当パンフで紹介した「NTスモールドレッサー」と同じヤスリ面を使っており、私にとっては「Return of SMALL DRESSER」とでも言うべき、思い入れのある製品である。
このヤスリの特徴は、ヤスリ目が細かい割に研削力が大きい事だが、この辺の微妙なニュアンスは実際に使って貰わないと伝わらないので、とりあえず興味のある方はぜひお試しあれ、と云った所にとどめておこう。
それにしても今回のこの項は異常に長い。
こんな事なら各品目ごとに分けるべきだった…。
サーフェイサ-の彼方へ (Surfacer’s Edge)
予想通りと言うか、やはり今回も「サフネタ」は続くのだった。
まず前回以降の経過から報告すると、結局あの後、「Mr.ホワイトサーフェイサー1000」を4kg缶で買ってしまった。
これについては色々あったのだが、最初はMr.サ-フェイサー1000が、4kgなら塗料店を通じて特別に出して貰える、と云う話が始まりだった。塗料流通の常識からすればかなり高額だったが、それでも当然模型店で買うよりは単位あたりでは明らかに安い。
私はサフも含めて、塗料は全て事前にある程度の量をエアブラシ用に薄めた物を作り置きしている。
希釈度は基本的に4倍(塗料1に対して、シンナー3)で、サフの場合はこれを1回で500cc作るのだが、瓶入りをいちいち薄めるのはそれだけでかなり面倒な作業なのだ。それ以外にも、あっと云う間に空き瓶がいくつも貯まってしまうのも邪魔だ、等幾つかの理由もあったりと云う事で結局Y崎氏にも1kg持ってもらう約束を取り付け、思いきって1缶買う事にしたのだ。
ところが入荷したのは「Mr.ホワイトサーフェイサー1000」。
これは話が違うと一旦受け取りを拒否して塗料店に待ったをかけ、メーカーに問い合わせて貰った所、4kgの荷姿で出せるのはこれだけだと言う。
色が白いのは構わないが、これがもし「Mr.ベースホワイト1000」の系統の製品だったらそれはこちらの目的には使えない。
あれは私の用途からすると粒子が粗すぎるので塗料としての性能が違っては困るのだ、と説明した所、「グンゼ産業に『Mr.サーフェイサー1000』として出荷しているのはこの白サフに黒を混ぜて着色しただけの物なので殆ど変わらないはず」とのメーカー側の回答にはビックリだった。
通常の商品だったら返品もあり得るが、これは本来4kgでは出さない商品をわざわざ小分けして出荷した物なので返品はきかないと言う。
とりあえず少量をサンプルとしてテストしてみると確かに物性は殆ど変わらない様で、ならば自分の好きな色に着色できる分、こちらの方が都合が良いし、なんと言っても模型流通では缶スプレーでしか手に入らない物が思いがけず入手出来るのだからかえって有難いではないか、とコロっと考えを変えて有難く受け取る事にしたら、なんとメーカーが着色用の黒までオマケに付けてくれたのだった。
私は個人のモデラーとしては異常に大量に塗料を買っていると思われるだろうが、塗料メーカーにとって私の様なユーザーと云うのは、はっきり言って「小口の客」ですらない。
毎日の様に一斗缶を幾つも買うぐらいでようやく「客」であり、それ以下ははっきり言ってゴミだろう(勿論直接そんな事を言われた訳ではない。あくまで私の勝手な意見である)。
そのゴミの様な客に対してここまできっちり対応してくれた事にはいささか驚いたし、思い切って買って良かったと思う。
こうした紆余曲折を経て入手した「Mr.ホワイトサーフェイサー1000」だが、これを最初に本格的に使ったのは、あの「金賞ザク」である。
一般常識からすれば塗装だけで3週間と云うのはトンでもない時間が掛かっているのは確かだが、以前の様にMr.ホワイトだけで下地を塗っていたらとてもこの期間で塗り上げる事はムリだったろうと思う。
どうやらこれからはインジェクションにもサフを使うのが標準になりそうだ。
と云う事は次回以降もサーフェイサー・シリーズは続くのだろうが、もういいかげんタイトルのネタが無い…。
次回はいよいよ「密林の王者・サーフェイサー」の登場だろうか?