欠陥模型大百科・威風堂々版
ENCYCLOPEDIA MODELLICA pomp & circumstance” version
Private Edition Ver.8.0.1
石川雅夫(MMI/LIMEGREEN)
第10回モデラーズ・スペース展示会(1999年)
[あたらしモン](”What’s New, Pussycat?”)
’90年代の幕開けと共に産声をあげた、当モデラーズ・スペース展示会も途切れる事なく回を重ね、こうして節目となる第10回記念大会をむかえる事が出来た、誠にめでたい限りである。
それにしても、運命の1999年7月は何事もなく、オ○ム信者の暴走どころか、バラエティー番組のネタにすらなる事なく静かに過ぎ去り(7月31日深夜のカウントダウンぐらいはどっかでやると思ってたのに・・・)、「30年近くも引っ張って、そのオチがこの程度かい!」と各マスコミにツッ込みの一つも入れたい気分で迎えた8月、夏WON-FES会場へと急ぐゆりかもめの車中から見た、電波少年の不発企画「電波少年的ハルマゲドン」の跡地に淋しく残るプレハブの姿が象徴的に目に映ったこの夏ではあった(唯一笑えたのが、五島勉が新聞に寄せた「コメント」だったと云うのも何とも情けない・・・)。
今回も先ずは前回までの内容、及び新情報のUpdateから始める事にする。
最初に、前回紹介した「水牲ウレタン」についてであるが、1つ書き忘れていた事があった。水性なので水で希釈できるし、アルコールでも良い、と書いたのだが、用具の洗浄はこれらでは出来ない。エマルジョン塗料である以上、乾燥固化した所はウレタン樹脂になっている訳で、当然これは、水やアルコールでは溶かし出す事は出来ない。
本当だったら「エンジン・シンナー」等のウレタン塗料用シンナーを使わなければいけないのだろうが、私は「ラッカー・シンナー」(スチロール・プラを侵す、「強い」方の事、Mr.シンナーではない)で洗浄していて、一応トラブルは起こっていないので、入手のし易さ、安全性から考えてこちらをお勧めしておく(勿論ラッカー・シンナーが「安全」などと云うつもりは無い。あくまで、ウレタン・シンナーとの比較の上での表現である)。
又、実際に試してはいないのだが「Mr.ツール・クリーナー」でも大丈夫だと思う、入手の容易さではこれが一番だろう。
さて、毎度お馴染みの新製品紹介であるが、先ずは我が宿敵OLFAが、又々NTの先を越したと云う話題。
もう御存じの方も多い事と思うが、OLFAの新製品「アートナイフ・プロ」は、正にモデラー向けのアートナイフとして注目のアイテムと言って良いだろう。まあ「X-ACTOのパクリ」と言ってしまえばそれまでだが、決して「パチモン」にはなっていない所がやはり日本のカッター・メーカーの面目躍如である。
X-ACTOやグリフォルド(GRIFHOLD)等の海外メーカー製のクラフト・ナイフ類は、替刃のヴァリエーションこそ使い切れない程豊富に揃ってはいるものの、取り扱い店が限られるし、何よりも輸入品と云う事もあって価格が高い。又、X-ACTOについては解らないが、少なくともグリフォルドについて言えば、替刃の刃付け(つまり研ぎの事ね)がお粗末な事この上ないのである。それも切れ味が良い、悪いと云ったレベルの問題ではなく、刃先に「バリ(返り)」が残ったまま、と云う恐るべき状態でパックに入って売られているのである。つまり研ぎの最終段階である「ラッピング」の工程が丸々省かれている訳で、これは日本のメーカーでは考えられない。
まあ、現代ニッポンとは違って欧米では今でも「刃物はユーザーが最後の仕上げをして使う物」と云う考えが常識として生きているので、それを反映したメーカーのポリシーなのだろう、と好意的に解釈し、自作の革研に研摩材をつけて刃先を数回しごいたら、それだけでバリは綺麗に落ちたのだが、これは逆に言えば、それ程「焼きが甘い」と云う事でもある。これも又「ユーザーが手入れし易い」と云うポリシーに沿った物であろう、と個人的には好意の解釈をしてはいるが、今の日本の現状にはそぐわない性質の刃物である事は否定しようがないだろう。
翻ってこの「アートナイフ・プロ」であるが、替刃の種類は3種類(通常のアートナイフ刃を入れれぱ4種類)しか無いが、どれも切れ味は申し分なく、日本のカッター・メーカーの刃付け技術の高さが見事に現れた物となっている。特に曲線刃の刃付けは見事であり、この刃が他の2種類と同じ価格(3枚300円)で売られているのは注目に値する(X-ACTO等の替刃は、直線研ぎの刃は総じてそれ程の高値でもないのだが、曲線刃になると突然価格が跳ね上がるのが常である。量産ラインにおける曲がり刃の研ぎの難しさがしのばれる)。
そしてホルダー自体も、通常のアートナイフやX-ACTO等の、単純に刃を挟み込むだけのタイプではなく、OLFAのデザインナイフやNTのD-400の様な、コの字型のチャックを2つ合わせて、替刃をガッチリくわえ込む方式をアートナイフのサイズでは初めて採用しており、替刃のガタつきは全く無い。分厚いラバー・グリップや、転がり止めの突起等とも併せてX-ACTO等よりは遥かに「使える」工具である。
さて、アンチOLFAの急先鋒を自称する私が、ここまでOLFA製品を手放しで褒めるはずがない、とお思いの貴方、
「ピンポーン」
と云う訳でここからは悪口、及びNTの宜伝である。
輸入品に比べれば安いとは書いた物の、やはり1本1200円と云うのは高すぎる。これではとても3本のホルダーを3種類の替刃それぞれ専用に割り当てる、なんて賛沢は無理だし、この魅力的な新製品の普及の妨げになっているのは間違いないだろう(当初、私はノミ型の替刃は使えないと思っていたのだが、実際に使ってみると刃付けが片刃でエッジ角が鋭い事もあって、かなり使えた。こうなると、これはやはり3種類共にホルダーに常備しておきたくなる)。
又、細かい話になるが、ホルダーの頑丈さを優先させた為だろうか、チャックの「肩」が削り落とされていないのも、私にはかなり気になる欠点である。文章で書いただけでは解り難いと思うが、先に例として挙げたOLFAデザインナイフ(タミヤも)や、NTのD-400のチャック部と見比べてもらえば理解してもらえるのではないだろうか。
ここが怒り肩のままだとワークに対して刃面を寝かせて使いたい時に角が障ってしまい、刃をべタッと寝かせる事が出来なくなるので、私にとってはホルダー選びの重要なポイントの1つなのだ。
さて、ここで登場するのがNTの新製品「DL-400G」であり、これが上に述べた2つの問題を見事にクリアしているのである。
この原稿を毎年読んでくれている方なら「DL-400G」と云う名前を見ただけである程度どんな製品なのか想像がつくのではないだろうか。
「D-400」のプラの軸をダイキャスト製の物に変えた「D-400G」の事は前回に紹介し、檄ホメした訳だが、これをそのまま「DL」、すなわちOLFAで言うアートナイフのサイズに拡大したのが今回紹介するこの「DL-400G」なのである。 頑丈なダイキャスト・ボディを持ちながら、400円と云うアートナイフ・サイズのホルダーとしては破格の安値も魅力だし、チャック部分は基本的に「D-400」系をそのままサイズ・アップした物なので、前に述べた「アートナイフ・プロ」が持つ欠点も無い。つまり、「アートナイフ・プロ」用の替刃だけを買って「DL-400G」に取り付ければ最強のコンビネーションが出来上がる訳であり、当然私はそうしている。 勿諭、皆さんにも両手放しでこれをオススメ…、したい所なのだが、ここでNTならではのお馴染みの問題が持ち上がる。
取り扱い店が少ない!
私が世界堂新宿本店で最初にこれを見つけた時には勿論狂喜した訳だが、同時に嫌な予感が頭をかすめ、何本かまとめて買っておいた。その後も見かける毎に買う様にしていたのだが、やはり数ヶ月もしない内に品切れとなり、その後東急ハンズ渋谷店に入荷したものの、ここにも今はなく、私自身取り扱い店を捜していると云うのが現状である(「フ ラグシップ」さん、お願いね)。
ここでNTが大々的に「DL-400G」の販売に力を入れれば「漁夫の利」を稼げる絶好のチャンスなのに・・・とNT党の私としては臍を咬む思いであり、ここ数年のOLFAの「上手さ」、それに対するNTの「下手さ」を見るにつけ、「OLFA=トヨタ」・「NT=日産」と云う嫌な連想が頭をかすめるのである。
さて、新製品と言えるかどうかは微妙な所だが、モデラーズ・カラーがビン入りの塗料を出したのは、皆さんもご存じの事と思う。これに今年になって新色が加わり、一応原色 が全部揃ったのだが、この原色を試した所、興味深い事が解ったので、ここに報告する(それにしても2ロット目でやっと原色が出る、と云う辺りがこのモデラーズ・カラーの特殊性を物語っている気がする)。
数年前の当パンフでY崎氏が、模型用塗料には単一の顔料から成る原色を持つ物が無い事を指摘されていた。これは私も以前から気にしていた(と云うよりあきらめていた)事だったのだが、今回モデラーズ・カラーの原色が揃ったのを機に、それらを一通り入手し試した所、殆どが単一の顔料だけで出来た原色だったのである。
具体的には、白、黒、赤、黄、青、縁、紫、オレンジの各色の中で、オレンジに白が混ざっていただけで、後は全て単一の顔料で出来た色だった。
だからどうした?と云う方も多いかも知れないが、混色を真面目にやろうと思うと、これは非常に重要な事なのである。
Mr.カラーの様に「原色」と言いながら、既に混色された色を基にしては、しばしば混色の結果が予想のつかない物になる(ちなみにMr.カラーの原色の内、顔料が単一の物は、白、青、赤だけだと思う。オレンジ、黄には白が入っているし、黒にすら微量の白、あるいはグレーが混ざっている。紫に至っては何をか言わんやであり、何色混ざっているのかすら解らない。実はEVAカラーのEVAパープルの方がよっぼどシンプルな構成になっている)。
特にパステル調の淡い色を作ろうとすると、これは大問題を招くのだ。例えば単一の顔料から成る原色に白を混ぜるだけ、と云う最も単純な混色を想定しても、白が混ざるにつれて色相は段々ずれて行くのが普通である(この現象を「色あし」と呼ぶ事は以前の本稿でも触れた)。顔料が単一である事は、必ずしも色相的にニュートラルである事を意味する訳では無く、例えば青なら、黄系の青と赤系の青、と云った具合に多少なりともどちらかに寄っているのが普通である。そしてその傾向は、白(又はクリア)を混ぜれば混ぜる程強まって来る物なので、淡色を作る時にはそれを計算しなければいけない、ましてその「原色」が既に混色されている物だったら、結果の予測などはつく筈もなく、到底コントロールしきれる物では無い。
私は近年では模型用塗料の混色は殆どせず、パール塗装の場合の発色は全てカラー・インクに頼っているが、これは前にも書いた通り、模型用塗料についてはその発色性をあきらめていたからに外ならない。
まぁ今回モデラーズ・カラーの原色を発見したからと云って、すぐに私がこれを全面的に使い出すと云う事はないし、当面の用途も特に思いつかない、と云うのが正直な所である。しかしとりあえず基準となる原色が見つかったと云うのはやはり大きい事だと思うし、これを足がかりに「何か」が出来るのではないかと云う予感めいた物があるのも確かなのである[ 註1 ]
結局これを書いた時点ではまだ漠然とした物でしかなかったこの「予感」は、思いもよらない程大きな結果に繋がりました。この時点まで私は、パール塗装については「オーバーコート法」しか頭になかったのですが、これを書いた直後、後に講座で「直接着色法」と称する事になる技法を思いつき、早速この年の展示会テーマ部門向けにザクとキュベレイをこの技法の実験も兼ねて製作する事になります。そしてこれを契機に様々な技法の組み合わせが可能である事に気付き、いくつかの幸運も重なって翌年JAF-CONでの受賞に繋がる事になりました。今から考えると、これを書いてから半年程の期間は実に沢山の技法を次々に発見していく、ある種奇跡じみた一時期だったように思えます。 |
(以前、私の部屋の多数の塗料のビンに甥っ子が輿味を示した為、油絵具のカクログをあげたのだが、それを見て一言、「どの赤が本当の赤なの?」と思いっきりな質問をされてマジに悩んでしまった事がある。「一番好きな赤が本当の赤だよ」とか何とか歯の浮くような事を言ってごまかせる人が羨ましい)。
ここまでの内容を読むと、何かMr.カラーの悪口ばかりを書いている様に受け取られるかもしれないが、それは決して私の本意では無い事は理解して欲しい。模型用塗料としての使い勝手を追求して行くと、ああいう仕様にならざるを得ないのであり、逆にあれだけの超微粒子顔料を使って充分な隠蔽性を持つ塗料に仕上げている事に驚くべきなのである。
以前、某超有名デザイナー兼マンガ家の永○護氏(特二名ヲ秘ス)が「模型用塗料には、ウルトラマリン・ブルーもなければクリムゾン・レーキもヴァーミリオンも、あろう事かチタニウム・ホワイトすら無い。これでは私のデザインしたファ○ィマの服の色を再現する事はできない」と発言しているのを読んだ事がある。
実は、かつて私は画材店で入手した顔料を模型用塗料のクリアに溶いて、ウルトラマリンの塗料を自作した事があるのだが、それを使ってみて何故この色が模型用塗料に無いのかが良く解った。ウルトラマリンやクリムゾン・レーキと云った色は、絵具として使った場合には透明感のある素晴らしい発色をするが、それは本当に顔料の透明度が高いからであり、これはイコール隠蔽力が弱いと云う、模型用塗料としては致命的な欠点となる。その上、着色力自体も低い為、その結果として、安定した発色を得る為にはとんでもない厚塗りをしなければいけない事になるのだ(しかも当然、下地は白にしなければならない)。
Mr.カラーの原色が何らかの混色をされている事が多いのも、正にこう云う事態を避ける為であり、その上に模型用塗料としての、経済性、安全性と云った二重三重の足かせの中で、混色の精度が犠牲にされるのは仕方の無い事なのだろう(大ざっぱな言い方になるが、隠蔽性と、発色の鮮やかさは仲々両立し難い物なのである。減法混色の宿命と云った所だろうか)。
実はこのモデラーズ・カラーの原色も、顔料性の模型用塗料としては隠蔽力は結構低い、特に青や紫はかなり透け易く、辛うじて着色力でそれを補っている感の強い塗料である。メーカーとしては勇気のいる塗料であり、そこをあえて「見切って」出した姿勢を私は評価しているのである。
[エアブラシ](Air-Brush)
※ CAUTION
この項の文章には、一部大きなリスクを伴う内容が含まれています。本稿の内容を実行して、万が一ハンドピースに何らかのトラブルが起こったとしても、当方は一切の責任を負う事は出来ません。以上、予めお断りしておきます。
これまで本稿では、塗装については何度も扱って来たし、その殆どはエアブラシによる塗装である事は自明の事としていわば暗黙の内にエアブラシ塗装を前提として来た訳だが、そのエアブラシ自体については余り触れる事が無かった。ここでは、過去の内容の後フォローをすると共に、冒頭でハッタリをかけた「危ない」内容について書いてみたい。
かなり以前の事になるが、ハンドピースについて書いた時に、ダブル・アクション式とトリガー式の違いを説明した事があり、その中で「模型誌等の記事で『ダブル・アクション式のハンドピースは、ニードルの開度だけでなくエア圧もボタンで調整できるので、こちらの方が良い』と書かれているのを見る事があるが、これは間違いであり、ニードルの開閉と、エア・スイッチのON/OFFが独立して出来るだけの事である」と云う内容を書いた事がある。
これが間違いだとは今も思わないが、正確な表現とは言い切れない部分もあるので、それについて説明してみたい。
「エア・スイッチのON/OFF」とは言っても、実態はそんな言葉で言う程にデジタルな物ではなく、「ON」と「OFF」の間には、言うなればファジイな、「ちょっとだけON」な状態があり、それが「はっきりON」と「しっかりOFF」のごく僅かな間を無段階でつないでいる。小難しい言い方をしたが、要するに指先の微妙なボタンの押し加減によっては、その僅かな「ちょっとだけON」の範囲内で圧力の加減も可能ではある、と云う事なのである。
但し、これは「可能である」と云うよりは「不可能で無くもない」と云う方がニュアンス的には正しいのではないかと思うし、少なくとも私にはボタンの押し加減でエア圧をコントロールする自信は無く、やはりこれは、レギュレータに頼るべき物だろうと思う。
「オラみてえなビンボ人には、そんだら高価なモンはとてもハァ手の届く事ではねいだよ。」という向きの方には、エア・ホースのジョイント部のネジをわざとゆるめて、エア圧を下げる、と云う裏技の方がよっぼどお勧めであり、模型塗装においては、この「ボタンの押し加減によるエア圧調整」は、実用性の薄い「機能」であると言って良いと思う。
勿諭、これはあくまで私の個人的見解であり、私の知らない所ではこの「機能」が大活躍している、と云う事はありうるので、めったな事は言えない。
広い世の中には、例えば人里離れた山奥でカスミを食いながら、日夜塗装修行に邁進する「怪人模型仮面」か何かがいて、「いやー、やっぱり1/72のドイツ機の迷彩塗装には10年かけて会得した、このエア圧微調整が欠かせないっス」などと云う事が…。多分ないだろうとは思うが(今、これを書いていて突然、フットペダル式のレギュレータがあったら便利かもしれない、と思いついたのだが、そう云う物の存在を聞いた事が無い、と云う事自体が「塗装中に連続してエア圧を調節する機能」と云う物に対する需要そのものが無い、と云う事の証明の様な気がする)。
以上が私の見解だが、この「機能」を有効に使っている、と云う方、又はそういう事例をご存じの方は、ぜひ私までご一報いただければ幸いである。[ 註2 ]
最近になって「エア圧調整機能付」を謳ったハンドピースがいくつか発売されました。この機能に対する評価はまだ定まっていませんが、「作業中のエア圧調整」を前提とした新しい技法が出てきたりしたら、塗装表現に新たな可能性が拡がるかも知れません。 |
さて、エア圧に関しては、これも以前に私の塗装セオリーについて説明した時に、エアブラシから噴霧される霧化された塗料は、その霧の粒子が細かい程、平滑な塗膜を形成する事を力説した。
これについては問題は無いのだが、具体的な例として「その為には、エア圧はなるべく高く設定する事が望ましい」と云う書き方をしている。これもこの意味の限りでは間違いでは無いが、これだけでは重要な条件が抜けている為、何でもかんでも最高の圧力で吹けば良い、と云った誤解を招きかねない表現である。
実際にはエア圧の設定は、塗装をするパーツの大きさによって大きく変わってくる物であり、他の条件が変わらないとすれば、パーツが大きくなる程、エア圧は下げる必要がある。[ 註3 ]
これはあくまでも「私流儀の吹き方において」の話である事をお断りしておきます。大きい物を塗るにはエア圧を上げる方が良い、と云うやり方もあるんですね。これはどちらが「正解」と云うような性質の事柄ではありません。本文でも書いた通り、一つの条件が変化したとしても、他の条件を変更することでその変化をカバーして、最終的には殆ど同じ結果を得る事は充分可能な事なんです。 |
前記の内容を書いたのはもうかなり以前の事で、その時点では2.Okg~2.5kgの圧力で吹く、と書いているが、現在では私の吹き方そのものが変わって来ている事もあり、1.0kg以上のエア圧で塗装する事はまず無い。
エア圧が下がった分はニードル開度をしぼる事で粒子が粗くならない様に努め、その分ハンドピースとパーツ間の距離を近づける事で調整している。この様にエアブラシ塗装と云う物は、エア圧、ニードル開度、パーツの大きさや、パーツとの間隔、そして塗料の濃度等々、さまざまな条件が複雑に絡み合っている物である事をここで改めて強調すると共に、以前に不正確な書き方をした事への反省としたい。
さて、本項の冒頭において何やら恐ろしげな警告を書いたが、そのお題の登場である。題して「あなたも、手持ちのハンドピースの口径が変えられる!(かもしれない・・・)」
現在私が使用するハンドピースは、0.5mmのトリガー式の物と、0.2mmのダブル・アクション式の物の2つであるが、これらはそれぞれ、元々は0.4mm、0.3mmだった物を、パーツの交換によって今の口径に組み換えた物である。
但し、こんな事はメーカーに頼んでも絶対に応じてはもらえない為、自分でリサーチを重ね、可能と判断した場合に、メーカーに修理部品としてパーツを発注し、自分の責任において自ら組み換えを行うのである。だから、どんなハンドピースでも可能と云う訳ではないし、メーカーからの積極的な情報提供も望めない以上、最終的に組み換えが可能か否かは実際にパーツを取り寄せて、組み付けてみない限り解らないと云う事になる。幸い私の場合は2つ共組み換える事が出来たが、それでも1つ2つ無駄になったパーツは出た(この程度ですんで幸運と解釈すべきであろう)。
そもそも私がこんな事を始めたきっかけであるが、かつて私はオリンポス社のHP-102Bを使っていた。これは皆さんご存じの通り0.3mm径であるが、オリンポスにはもう1つ、HP-102Cと云う0.4mm径のハンドピースがあり、この2つは先端部分を除けばそっくりである。メーカーの立場で考えてみても、わざわざこの2つを基本設計から変えているとはとても思えず、口径に関するパーツだけ交換可能な物を2種類ずつ作ってそれぞれの口径に対応させ、本体部分は共通で使っていると考えるのが自然である。
丁度この頃、口径の大きなハンドピースが欲しいと思いはじめており、互換性にほぼ間違いは無いだろう、と画材店に102C用のノズル、ニードル、エアキャップ、ニードルキャップの4つのパーツを注文した。そして、これらのパーツは見事に所定の場所にはまり、「102Bの皮を被った102C」が誕生したのである。
これはハンドピースとしての機能上は何の問題も無く作動していたが、102のデザインそのものが持つ、「グリップが無い」と云う欠点の為、長時聞の使用が辛くなった結果、リッチ社のGP-2と云う0.4mm径のグリップ付きトリガー式のハンドピースに、その座を譲る事となった。
さて、このGP-2、同社のGPシリーズの中では当時の最大ロ径だったのだが、近年になってGP-3と云う0.5mm径の製品がシリーズに加わった。と云う事は当然これも組み換えが可能なのでは、と思いリサーチを始めたのである(丁度この頃、「金色のやたらとでかい奴」の製作依頼を打診されていたのだ)。
しかしどうにも欲しい情報が集まらず、思い切って画材店に相談してみた所、メーカーに問い合わせてくれると言う。程なく画材店から来た電話はやはり「そう云う事は出来ない、と云う解答です」との事。「それって、メーカーとしての、いわゆる公式見解って奴じゃないの?」と聞いたら「そこまで言うんなら、あんた自分で聞きなさい」とメーカーの連絡先を告げて電話は切れ、成る程それももっともだと思い、リッチ社に直接電話をしてみた。
電話に出たおばさんにこちらの主旨を説明すると、やはりそれは出来ないと云うつれない返事。ここで又同じ事を言っても事態は変わらないと思い、「実は以前に、O社の102Bをノズルとニードルとエアキャップとニードルキャップを102Cの物と交換して、0.4mm径に組み換えた事があるんだけど」とぶっちゃけてみた(オリンポスと云うのは、メ ーカーとは云っても実は自社工場は持っていない。実際の製造、及び修理等の実作業は全てリッチが代行しているので、オリンポス製品の話をしても通じるはずだと思ったのである)。
すると一瞬の沈黙の後、「つまりノズル、ニードル、エアキャップ、ニードルキャップの全部を一遍にGP-3の物に交換すると云う事ですか?」と聞き返して来た。「初めっからそう言ってんじゃねえかよ!」と心の中で叫ぴつつも冷静に「えぇ、そうです」と答えると、「わかりました、調べてみますのでしばらくお待ちください」と明らかに態度が変わってとりあえず電話は切れ、30分後にかかって来た電話で、「可能です」との解答を得る事が出来た。そして必ず4つのパーツ全てを交換する様に、と念を押してメーカーからの電話は切れ、私は快哉を叫んだのだった。
その後すぐに画材店にGP-3のパーツ注文を出した事は言うまでもなく、その結果現在私がメインとして使っているのは、0.5mm径のGP-2、と云う世にも珍しいハンドピースであり、人はこれを「サイサリスの皮を被ったデンドロビウム」と呼んでいる(どうやったら被れるんだ!)。
さて、もう1つの0.2mmの方であるが、実はこれはモデラー内普及率NO.1を謳われるオリンポスのHP-101なのである。[ 註4 ]
この項全体に言える事ですが、ここ数年で模型界におけるエアブラシの勢力分布図は大きく様変わりした事を実感させられます。今にして思えば、この時点で既に模型界ではオリンポスの覇権は終わっていたのでしょう。現在、「101」と云う言葉を聞いて「オリンポスのHP-101」を真っ先に思い浮かべるモデラーはある年齢層以上の世代になってしまったようです。 |
これに関しては前述の2例程スムーズには行かなかったのであり、その理由は、前2例と違いHP-101には同系列の口径違いと云うモデルが無く、流用出来そうなパーツの見当が付けにくかったのである。まぁオリンポスで0.2mm径と云えばまずHP-100A/Bが思い浮かぶ訳で、とりあえず100用のノズルとニードルを入手して取り付けてみると、一応ノズルのネジ径とピッチ、そしてニードルの太さは同じで問題なかったのだが、エアキャップはネジ径そのものが違っていて全く使い物にならず、この段階で一度は諦めて放り出しておいたのである。
それから何度か試しては失敗、投げ出す、を繰り返したのだが、ある時ふと、サブとして使っていたリッチのGP-S1と云う0.2mm口径のハンドピースのパーツが使えるのでは、と思いついた。
先程も述べた通りに別ブランドとは云え、実は製造元は一緒である、もしやと思いパーツを取り外してみると、何とびったりなのである。ノズルの先端とエアキャップの位置関係と云うのは、1/100mm単位のアラインメントが取られる物であり、0.1mmもずれたら色材そのものが飛ばなくなる、と云うくらいの微妙な物である。それが実用に何の問題も無いレベルで合ってしまったのだから、これには驚くと共に、さすが兄弟の血は濃い、などと妙な感心をしてしまった(「あなたは生き別れだったお兄さん!」、「そういうおまえは弟 !」byどろろん忍者)。
このハンドピースは現在サブとして活躍中であるが、ここまでパーツを寄せ集めると、もう何と呼んで良いか解らない、強いて言うなら「どろろん忍法、秘技・生き別れのお兄さん」と云った所だろう。
以上3例が現在までに私が行った口径の組み換えであり、正確なデータとして提供出来るのはこれだけである。他にもこう云う芸当が可能なケースはある筈だが、前にも述べた通りメーカーがおいそれとはデータを出してはくれない以上、リサーチは困難な物となる。たまたま知人が有望そうなパーツの付いたハンドピースを持っていたとしても、よほどの信頼関係がなければ「ちょっとそのピース分解してもいい?」などとは頼める物ではないし、何よりもその為には先ず貴方がハンドピースの構造を熟知し、分解の手順をきちんと把握していなげれば、組み換えを試みる事自体が無謀な物となる。冒頭で宣言した通り、この試みはリスクを伴う物であり、以上の事を踏まえた上で、それでもやって見ようと云う人以外には私はこれを勧めない。
勿諭、聞かれれば知っている限りのデータは提供するし、協力も惜しまないが、それはあくまで「自己の責任において」行うと云う自覚のある人に対してのみである。エアブラシは基本的に精密機器であり、特にノズル周りと云うのは特別な事がない限り、なるべくいじるべきではないと私は考えている(何ヵ月か前に、HJ誌が巻頭でエアブラシ特集を組んだ時に、ノズル周辺の分解手順を写真入りで段階的に解説し、ノズルも取り外して洗浄してやろう、と云う意味の事を書いていたが、私はこれには反対である。ノズル周辺の構造と分解方法を解説する事はたしかに有益だとは思うが、HJ誌の平均的読者層を考えると、充分な警告なしに安易にノズル部の分解洗浄を勧める事は明らかに問題があると思う)。
ここまで書いておいてこんな事を言うのも何であるが、本当にどうしてもいろんな口径のハンドピースが使いたいのであれば、口径の数だけハンドピースを揃えるか、最近一部で話題のAZTEKから出たノズルユニットの交換で口径が変えられるタイプの樹脂ボディのハンドピースを買う方が安全なのは間違いない(実はこのAZTEKのハンドピースには個人的にも興味がある。どなたか実際に使った経験のある方は、ぜひ詳しい話が聞きたいのでよろしく)。
勿諭、勇気あるつわものが現れる事は期待している、世界は勇者を待っているのだ。[ 註5 ]
今となっては「つはもの」が登場する事はまずないでしょうね。AZTEKが先鞭をつけた「単体でノズル口径が変更できるハンドピース」と云う流れは、その後「Colani」「Evolution」といったH&S製品に単を発した一連のAIRTEX製品によって一気に定着しました。 |
さてここからは、もしこれからオリンポスのハンドピースを購入しようとしている方がいたら、その人達へアドバイスである。
数年前、一連のオリンポス製品は殆ど意味の無い様なマイナーチェンジと共に、大幅な値上げが行われ、これにより現在、HP-101は24500円、HP-102Bは27500円、102Cは28500円と、かなりの高額になっているのだが、同社はこの値上げの後しばらくして、「高品質精密メカ仕上げシリーズ」なる、よくわからない名称の一連の新製品を出した。
実はこの「新製品」はカタログを見る限り、どう見てもマイナーチェンジ以前の一連の旧モデルそのものであり、せいぜいニードル・ストッパーが、黒いプラの物から金属製に変わっている事以外には、全く違いは見出せない。
つまりこれ等はどう考えても「同一仕様の廉価版」なのである。HP-84Dと云うのが、102Cの相当品で16500円、HP-84Cと云うのが、102Bの相当品で15500円(そろそろ解って来ましたね?)101の相当品にはHP-73Cと云うのが15000円で出ており、この他にもHP-73Dと云う、言わば「0.4mm径の101」とでも言うべき新仕様の物まで16000円で出ているのである。
この他にもいわゆる「ピースコン」シリーズの物は殆ど相当品があるだけでなく、上に見た様な新仕様の物もあり、今オリンポス製品を買うならば、こちらのラインナップの方が絶対お勧めである。
唯、今私が直接新しいハンドピースの選択を相談されたとしたら、そもそもオリンポス製品そのものを勧めない。
それよりもリッチやトリコン等のメーカーの方がよっぼどリーズナブルだと思っているし、わざわざオリンポスを買うメリットと云ったら、せいぜい槙型店で修理を受け付けてくれる場合が多い、と云った程度の事に過ぎず、それだったら最近では模型流通でも、タミヤやグンゼ、あるいはボークス等のGKメーカーでも自社ブランドのハンドピースを出しており、オリンポス製品に優位は全く無いと云うのが現時点での私の判断である(前述の廉価版シリーズの登場も、オリンポス自身がそれを解っている事の現れだろうと私は思っている)。
元々オリンポスが、生産設備を待たない「メーカー」だった事に範を得たと云う事か、これら模型メーカー製のハンドピースも当然、リッチ、トリコン(八重崎ホーミ)等の専門メーカーが、実際の製造を受け持っている筈なので、画材流通の物に比べて精度、品質等に違いは無い物と思う。
一番明白な例としては、ボークスが造形村ブランドで出したPM-B(プロモデルB)と云うハンドピースは、どこからどう見てもリッチ杜のGP-1そのものである。0.35mmなどと云う中途半端な口径はこの機種以外に見た事が無いし、そんな事以前に本体に堂々と「RICH、GP-1」と刻印されているのだから疑い様が無い(と云う事は当然、GP-2、GP-3のパーツを使って、0.4mm、0.5mmに口径を組み換える事が可能な筈である。但し、0.2mmには出来ない、GP-S1は、他のGPシリーズとはエアキャップのネジ径が違うのである)。唯、不思議な事に、手持ちのカタログで見る限り、GP-1が15500円、それに対してPM-Bが、12800円と、珍しい事にボークスブランドの方がかなり安くなっているのである。
この他にも、タミヤ、グンゼ、ウェーブ、ワーク等、各社から自社ブランドでハンドピースが出されているが、さすがにこれらは独自の仕様が多く、一見しただけでは、元になったモデルを特定する事は難しいが、どれも基本的には在来の機種をカップの形状や取り付け方、ニードル・アジャスター等のオプション部分の変更で、別モデルにしている物と思われる(当然、刻印も各模型メーカーのブランドになっている。ボークスも、PM-A等、他の商品には全て自社ブランドが入っているのに、何故かPM-Bだけは、RICHのままなのである)。
勿論これは、あくまでも推諭なので確言は出来ないが、しかしメーカーがわざわざ主要部分を新設計する様な不経済なマネをするとはとても思えない。同じ事はオリンポスの廉価版にも言える訳で、これだけ価格が違うとその品質が心配になるが、わざわざ新規に精度の違う製品を出すとしたら、その方がよっぽどコストが掛かる筈であり、常識的に考えれば中身は旧モデルのまま、と判断して間違いはあるまい(尚、全くの私見ではあるが、これらの模型メーカー製のハンドピースは、私が見た限りでは、その全てがリッチ社製なのではないかと思っている。勿論、これには何の確証も無いのだが、私が見た限りでは、トリコン系に見える物が一つも無いのである)。[ 註6 ]
いまや模型用ハンドピースは群雄割拠、どこのブランドがどのメーカーのOEMか?なんて私にも全く判らない状況となっております。 |
[サーフェイサー・最終章] (Surfacer,So What?)
この原稿を書くにあたって、久しぶりに以前の内容を全て読み返してみた。
時と共にサーフェイサーに対する内容が見事に変わって行く事に我ながら改めてあきれるぱかりだったが、昨年の時点においてはレジン・キットにはプラサフを使い、インジェクション・キットには使わない(必要ない)と云う事で落ち着いていた。これは今も基本的には変わっていないが、かつて自分が書いた原稿を読み返す内に、むくむくと天邪鬼が頭をもたげて来た。
「確かにインジェクションにサーフェイサーは”必要”な物では無い。でも、それ を”使ってはいけない理由”は何かあるのか?」 と、すっかり他人に成り切って過去の自分にツッ込み返してしまったのである。小沢一郎と呼ばれたくなければ過去には責任を取らなければいけない、と云う事で以下これについて検証してみる事にする(今回はインジェクション・キットの話が主になる為、特に注意が無い限り、サーフェイサーとは「Mr.サーフェイサー1000」の事である)。
過去の原稿では、サーフェイサーの機能を5つ挙げ、それぞれについて、「サーフフェイサーである必要は無い」事を説明したが、今回は、その5つについて、「サーフェイサーであってはいけない」のかを検証してみる。
その5機能は、
I. パーツの表面状態を確認する。
II. パーツ表面のキズを埋める。
III. 上塗りする塗料の付着性を向上させる。
IV. 下地色を均一にする。
V. パーツ表面全体を均質な塗膜で覆う。
であった。
IとIIに関しては、塗装前に処理しておくべきと云うのが私の見解だったが、ここには多分に精神論の臭いがする。この為に何度もべ夕ベタとサフ吹きを繰り返すと云うのは論外にしても、必要最少限の量を使う事によって、作業の効率化が計れるのであれば、それは「必要」であるかはともかく「有効」ではあるだろう。
IIIについては、今も良く解らない、と云うのが正直な所である。
レジン・キットに関しては、この点が私の変節の原因となり、それ以降の「プラサフ」使用へと繋がった訳だが、インジェクションについては、はっきりとした密着性の違いを感じる事は無い様に思う。
唯、私自身がそれ程サーフェイサーを使い込んでいない事もあるし、信頼すべきモデラー氏による「付着性が上がる」と云う証言もあり、少なくとも通常のMr.カラーより付着力が低いと云う事はまず無いと思われる。ならばこれもサーフェイサー使用を否定する理由には成り得ないだろう。
そしてIV、Vについては、通常のMr.カラーで充分である、と云うのが私の見解だったが、これも、じゃあサーフェイサーではいけないのか?とツッ込まれると否定する根拠に乏しい。
IVについては、下地色がグレーでは困る、と云うケースは確かにあるが、最近では白やピンク等、そう云う時の為の下地用塗料が数社から出されているので、それを使えば良い、と言われれば返す言葉は無い(唯、「Mr.ベースホワイト1000」に代表されるこれらの下地用塗料については、まだ私自身満足に使った事が無いので、全てが「Mr.サーフェイサー1000」に変わり得る性能を持っているかは解らない、と云う事は言える。例えばMr.べ一スホワイトについて言えば、サーフェイサー1000に比べて塗面のキメが租い、と云う意見を聞いた事がある。それが本当だとすれば、おそらく白いままで隠蔽力を上げる為に大きめの顔料を使っている、と云う所だろうが、そうだとするとそれはそれで問題であり、検討すべきだろう)。
最初にこれを取り上げた時には、私がサーフェイサーを使わない理由、と云うのも幾つか述べているが、それを再録してみると、
1. グレーでは無く白い下地が欲しい。
2. へっ、俺はサーフェイサーなんてつかわないぜ、と自慢できる。
3. とにかくサーフェイサーがキライだ。
4. 肉の脂身もキライだ。
と以上の4つ(?)であった。
今これを見てみると、1に関しては、ある時期以降何が何でも白地!と云う作り方では無くなって来ており、それ以降はどうやら2だけが理由だった様な気もしてくる。
かつて私がサーフェイサーを批判したきっかけは、模型ジャーナリズムの情報に何も考えずに流され、サーフェイサーは「吹かなければいけない」と思い込んでいるモデラー達に対する啓蒙的挑発のつもりもあったのだが、今にしてみると、それはせいぜい小川直也のアピール程度の物でしかなかった様にも思える(「キャラクターモデラーの皆さま!目を覚ましてください!!」)。どうもBSマンガ夜話における、いしかわじゅんと云い、あの大学の出身者には身の程知らずが多い様である(出身校のせいにしてはいけない。悪いのは自分自身だ)。[ 註7 ]
誤解を招くといけないのでこの場ではっきり言っておきますが、私は両者ともファンなんです。いしかわ氏は誇れる先輩ですし、「BSマンガ夜話」での発言も至極当然の事を喋っているだけで、あれ聞いて怒る方がどうかしてると思ってます。ただ、両者とも世間的に「お前が言うか!?」と云う反感をかってしまい易いキャラなんですよね…。 |
以上の様に、サーフェイサーを使ってはいけない理由などは無い。今の私に言えるのは、モールドが潰れる程の厚吹きは止めた方が良い、と云う程度の当たり前のアドバイスであり、その為にも缶スプレーよりは、ビン入りの物を適宜薄めてエアブラシで吹く事をお勧めする(最近になってMr.サーフェイサーは、あの使い難い四角のビンでは無く、レジン用プラサフと同じ丸いビンに変わっているので、エアブラシ塗装にも使い易くなっているのである)。
吹く回数も2回までにしておくのが無難だろう、まず表面の確認の為に軽く一回吹き、いわゆるサフ研ぎの後、下地が出てしまった所をカバーする意味も込めてもう一回と云った手順である。
私自身に関しては、これを書いたからと云って突然、明日からサーフェイサーを使いだす、と云う事では無いが、全く使わない、と云う看板は降ろす事にする。使った方が明らかに効率的と思われる場合にも使わない、と云うのでは単なるバカに過ぎないし、かと云って塗装の段取りの都合上、使わない方が良いケースもやはり多く、当然の事ながらケース・バイ・ケースと云った所だろう(実は私は下塗り用の目的で、Mr.カラーのホワイトを4kg缶で買い込んでおり、これを使い切らないと勿体ない、と云う事情もあるのだ)。
結局問題となるのは、それがサーフェイサーであろうとそうでなかろうと、「不必要」な塗り重ねをしない事であり、それはつまり自分が何故今この作業をしているのか、と云う事を常に認識すると云う、「姿勢」の問題と言えると思う。
この項のタイトルは、一応「サーフェイサー・最終章」としたが、勿論結論などは出ていない。だからこれから「サーフェイサー・新たなる旅立ち」を書く事は充分有り得るし、「火星のサーフェイサー」や「サフの惑星・征服」だってあるかも知れない。その頃には又、全然違う事を言っているかも知れないし、もしかしたら脂身だらけのトンカツを喜々として頬張っている事だって無いとは言えない(オェッ)。
全く時の流れと云うのは恐ろしい物である…。
それでは次回「サーフェイサー、ニューヨークヘ行くの巻」で、又お会いしよう。(嘘だぞー、嘘!)。
(P.S. カラオケは今でもキライである)
(P.P.S. 後記を書くスペースが無くなった…)