欠陥模型大百科・疾風怒涛版

ENCYCLOPEDIA MODELLICA  “sturm und drang” version
Private Edition Ver.6.1.2

石川雅夫(MMI/LIMEGREEN)
第8回モデラーズ・スペース展示会(1997年)

[あいさつ](Greeting)

「ようこそ、私の『濃い』世界へ」
と言う訳で、今年もこのコーナーは続いているのだった。毎回、今年で柊わるだのネタ切れだのと言い続け、「次回はあるのか?」が、決まりの結びとなっているこのページであるが、今回もこうして最新97年度版をお届けできる事となった。誠にうれしい限りであり、こうして書き続けられるのも、ひとえに、私一人の努力のたまも……×××××読者諸氏の声援あっての事と感謝している。

この展示会も早いもので、回を重ねて今年で8回目(だったっけ?)をむかえる訳だが、年を経るにしたがって各メンバー、各サークルごとに独自の趣向をこらした展示内容も増え、最近ではメイン・テーマ以外にも各サークルを中心とした有志による、言わばプライベート・テーマによる競作が盛んになって来ている。

今年も一段とその傾向は増し、各々が秘密裏に各自のテーマを決め、暗躍しているらしいのだが、事前に私のもとに入ったいくつかの情報によると、今年のキーワードは「クルマ」であるらしい。そこで今回はこのページでも、カーモデルに代表されるグロス塗装の実際について、以前取り上げた事も含めてさらに具体的に書いてみるつもりである。中でも、最近質問が一番多かった「ホコリ対策」をメインに進めてみたいと思っている。例年通り、あるいはそれ以上にDEEPな内容になると思われるので、心してついて来ていただきたい。では。

「ふっふっふ、おぢちゃんのは、濃いんだよ……」

[後フォロー](After Care)

まずは、毎年恒例の前回の内容に関する後フォローだが、今回はひとつの項にまとめてしまうことにする。最初に、毎度おなじみ「アートナイフ」について。

前回「アートナイフ」の項で紹介したNTの製品、”DL-400”であるが、いままで私が紹介したいくつかの製品と同じく、見かけなくなってしまった。前回は新宿の世界堂本店にあると書いたが、その後注文をしなかったらしく、すぐに見なくなってしまった。

ただ、同時期に東急ハンズ渋谷店の文具売り場カッター・コーナーで売っているのを見つけたので安心していたのだが、ここも最近売り場から姿を消してしまい、NT党の私としては悲しい限りである。店員に話を聞いてみたところ、在庫はしていないが注文があれば取り寄せてくれるとの事なので一応安心はしたが、あのNTの事だから、いつ何時突然廃版になるかも知れず、NT派の悩みは続くのである。

注文してでも使ってみたい、と言う物好きな方がいたら、渋谷ハンズの文具コーナーで注文していただきたい(あの店は同じ店内でも、売り場が違うと仕入れも違うらしいので、B1やデザイン売り場のカッター・コーナーに行っても話は通じないと思う)。

さて、このDL-400と同じ運命をたどる可能性の高いおなじみの新製品紹介だが、NTで新製品をまたひとつ見つけたので報告しておく。”D-300”という名前の「デザイン・ナイフ」である(「アート・ナイフ」と「デザイン・ナイフ」の定義については前々回に書いたのだが、以前のパンフを読んでいない方のために簡単に説明すると、本稿では「小さい奴」が「デザイン・ナイフ」、「一回り大きい奴」が「アート・ナイフ」という事にしている)。今までNTの「デザイン・ナイフ」の中で、一番ポピュラーだったのは”D-400”と言う、黒軸に白いキャップが付いた物で400円だったが、この”D-300”は、一本300円である(NTは基本的に型番が値段になっている)。

”DL-400”と殆ど同じ白軸で、刃をくわえる部分は”D-400”やタミヤ=オルファのデザイン・ナイフ等と違い、オルファの「アートナイフ」と同じ簡単な構造なので、多少不安定に感じる人もいるかも知れない。元々「デザイン・ナイフ」の替刃自体が華奢な物なので、ムダな力を入れすぎないためにはこれで良いのだ、と言う事かも知れないが、好き嫌いは別れる所だと思う。

NTとしては”DL-400”の軸型を流用して、構造も簡単にしてコストを下げ、ローエンドの「デザイン・ナイフ」を出す、と言った狙いがあるのだろうが、たとえば、「私はデザインナイフのホルダーを常に何十本と用意して、とっかえひっかえ使っているので100円でも安い方が良い」とか、「私は力が強過ぎる為、週に一本はデザインナイフの軸を壊してしまうので、安いのが欲しい」あるいは、「オラ、家がビンボでガッコさもろくに行げねがったぐれえだで、ひゃくえんも安いっちゅうのはハアありがてえこんだぁよ」等と言う人以外には大したメリットでは無いかも知れない。勿論、私はNT党でもあり、又”D-400”が今一つ好きではない事もあって、この”D-300”は喜んで使っている。実用面での利点としては、前々回に紹介した「NTの”短刃”を折取ってポイント角60度のデザインナイフ用替刃として使う」と言うのをやるのに適していると言う事がある。”短刃”を折った物は、「デザイン・ナイフ」の替刃に比べて少しだけ幅が広くなるため、同じNTでも”D-800”やKDS-Hiのデザインナイフでは、前にも書いた通り、「へっへっへ……と笑いながら穴を拡げて無理矢理突っ込」まなくてはならないのだが、この”D-300”は、最初から調教済みなので(?)楽に入る。構造が簡単な分、融通がきくと言う事だろう。

そして、もう一つは「耳栓」の項についてである。

前回、ハンドピースから吹き出すエアーの音は、聴感上よりも遥かに音圧が高い為、気づかない内に耳をやられる事がある、と言う内容を、自分の体験もまじえて書いたのだが、これについて当会メンバーのS方K造こと、T谷氏から寄せられた情報があるので、ここに報告する。

氏は、今年になってレトラセットのコンプレッサーを導入した。それまで使っていたコンプレッサーが、かなり騒音が大きく、とても夜間には塗装が出来ない状態だったと言う事で、決心したそうである。稼働中でも聞こえるのはピースから吹き出すエアーの音だけ、と言うウワサ通りの静かさで昼夜かまわず長時間の塗装作業が出来る様になり、さすが高価なだけの事はある、と納得したと言うがそれは本筋ではない。

以前に比べれば格段に静かになったのに、逆にその途端に塗装中耳がおかしくなったのだそうだ。最初は訳が解らず、昔かかった悪い病気がぶり返したか?等とあらぬ事を考えたりした後で、はたと前回のパンフの記事を思い出し、ああこれがそうかと納得した、との事であった(尚、この「昔の病気」が何であるかは氏の名誉のため秘密である。少なくとも私の口からは言えない、まさかあのT谷氏が、あんな……いや、これ以上は口が裂けても言えない)。

前回これについて書いた時点では私以外に体験者がいない事もあり、特珠なケースだから一般のモデラー諸氏は心配する事はない、と書いたが、T谷氏の報告を聞くとそうも言ってられないかも知れない。氏が私にこれを報告した動機が「ただ単にレトラのコンプレッサーを買った事を自慢したかっただけ」と言うのを差し引いても、聞き捨ててはおけない事実は残る。各人の塗装の時の癖(ハンドピースを無意識の内に顔の近く、つまり耳の近くに持ってきてしまう、等)などにも大きく左右されると思うので一慨には言えないが、一応気には留めておいた方が良い、と言う表現に修正しておく事にする。[ 註1 ]

これについては、96年版の註でも書きましたが、吹きつけ時のエア圧が大きく関係する事が判ってきました。T谷氏のケースも、コンプレッサーのパワーに余裕が出来た為、それまでよりも高い圧力で吹く様になった結果ではないか?と推測されます。

[クリアがけ](Clear Coating)

冒頭にも書いたが、私の元に入った事前情報が正しければ今回の展示会には、これが本当にMスペースなのか?と疑うばかりの数のカーモデルが出品されている筈である。そしてそれは、普段クルマは勿論グロス塗装自体をめったにやらない人達が、一斉に慣れないツヤありモノを作ってくると言う、なかなか楽しみな事件でもある。

ここで私なりに、彼らがたどるであろう道筋をシミュレートしてみると、最初の内は各模型誌の記事や、以前の当パンフ等を参考にある程度丁寧な下地作りなども心がけたりするが、工程が進むにつれ今まで思ってもみなかった種々のトラブルに見舞われ、トラブル・シユーティングに追われるうち段々と手をかけるのが面倒になり、時間も無くなって来たりして、最後には数々の失敗をカバーする為に、とりあえずクリアを厚く吹けばツヤだけは出る、とばかりにべタベタにクリアののったクルマが並ぶ、と言うのが私の予想なのだが、さて結果はどう出るだろう(当日が楽しみである)。

まあ、そんな予想はともかく、ここではグロス塗装においてクリアがけにはどんな意味があるのか、を考えて見たい。

グロス塗装の究極と言えばクリアをかけての研ぎ出し、と一般的には思われているが、グロスの本場(?)たるカーモデル界では必ずしもそうではなく、研ぎ出しはあくまでも、デカール保護や、最終仕上げ段階で修正を楽に行う為に使われるテクニックの一つにすぎない、と言い切る人も多い。そして、そう言う人達が、あえてクリアがけをしない場合の理由としてまず第一にあげるのが「発色」の問題である。

無色透明の物を上からかけるだけなのだから色は変わらない筈、と思われるかも知れないが、そうでは無い。
そしてそれはソリッド色(顔料性の塗りつぶしの色を総称して”ソリッド”と呼ぶ、つまり普通の塗料は殆どが”ソリッド”であり、これに対する反対語には、”クリア”や”メタリック”、”パール”等がある。「S.D.E.ソリッド・カラー」のことでは無いので念のため。S.D.E.が余計な名前をつけたおかげで一々説明しなければならない、迷惑な話である)において特に顕著であり、明らかに色味が変わってしまう。

具体的にどう変わる、と言う表現はしにくいのだが良く言われる事としては、「ソリッド感が無くなる」とか、「濡れ色になる」等と言う表現をされる。ただでさえカーモデラーには「色」に拘る人達が多い事もあり、わざとクリアをかけずにその分地色を多少厚めに塗って、直接その塗膜を研ぎ出してしまう、と言うやり方をあえて採る人も多いのである。

それでは、クリアがけが必要になるのはどんな場合か? まずあげられるのが、メタリックや、パール・カラー、そして着色クリアを使った時など、直接塗膜を研ぐ事が出来ない場合に、上からクリアをかけ、そのクリア層を研ぐと言ったケースである。

又、デカールを貼ったモデルも多くの場合クリアがけの上研ぎ出しをされる場合が多いが、これについては必須のメニューと言う訳ではなくケース・バイ・ケースである、とする意見も最近増えてきているらしい。確かにデカールの保護、モデルの保存性、等を考えればメリットは大きいが、その分リスクの大きい技法なのも事実である。

デカールを保護する為と言いながら、そのデカールを台なしにしてしまう危険性を常にはらんでいる。そして、たとえ首尾よくデカールにダメージを与えずにクリアを塗れたとしても、デカールの上にのったクリアと言うのは乾燥に大変な時間がかかるのである。

デカールを貼ったモデルを研ぎ出すには、デカールの段差を消す為に通常よりもかなり厚めにクリアを塗らなければいけない上、デカール自体がシンナーを吸ってしまう為、デカール部分がいつまでたっても軟らかいままで、なかなか完全乾燥してくれない(デカールも人間同様、シンナー中毒から抜け出すには時間がかかるのである)。

完全に乾燥し切っていない塗膜を研ぐとキズが付き易いし、何より後々デカール部分だけヤセたり、波打ったりしてくるのは火を見るよりも明らかである。そんなこんなで乾燥待ちだけで数週間、数ヶ月と言う事だってありうるのだ。

何より全作業の最終段階に来て、こう言うリスクの大きい作業をしなければいけない、と言うのは精神衛生上も誠によろしくない。長い時間をかけて積み重ねて来た工程の果てに研ぎ出しで失敗する、と言うのは大抵の場合、全てを最初からやり直さなければいけないと言う事であり、これはもう正に再起不能のダメージである(ここの所は、経験者が語る「心の叫び」である、あだやおろそかに聞いてはいけない)。

これだけのリスクを冒してまで研ぎ出しに拘るべきか?と言った疑問に加え、特にレーシング・モデルの場合は、実車でもマーキング部分は半ツヤかツヤ消しである場合も多く、デカールの透明なフチさえ適切に処理出来れば、かえって貼りっ放しの方がより「らしく」見えると言う主張をするモデラーも現れている。この様にカーモデラーの間ではクリアがけは、「常識」とする人達が多いのは確かだが、一方では、「必要悪」と言い切る人達も増えて来ているのである。

さて、今、皆さんの前に何台、凸凹のクリアを分厚くまとったクルマが登場しているのかは、これを書いている時点では知る術も無いので、当日のお楽しみとするしかないが、今言えるのは、たとえどれだけクリアをかけても下地段階での手抜きや失敗はごまかせるものではない、と言う事を何人かは身をもって知るだろう、と言う事である。

その貴重な体験を踏まえて、もう一度過去に私がこのパンフで書いた事を読み返してもらえば、私が言いたかった事をさらに深く理解してもらえるのではないか、と秘かに思っている所である。[ 註2 ]

結局この回の展示会では、「サーキットの狼」コンペ、「湾岸ミッドナイト」コンペを予定していた連中がことごとくヘタレてしまって、クルマは殆ど出品されない、と云う最低のオチがついたのでした。

[サーフェイサー](Surfacer)

毎回この展示会に足を運び、このパンフを読んでくれている方々の中には、この項目の見出しを見ただけで、「ああ、またか」と思われた勘の良い方もいるに違いない。そう、誠に面目無い話だが、ついに私もサーフェイサーを使う様になってしまったのである、ああ、なんて恥ずかしい……(ああ、しかも真っ昼間からこんな明るい所で……ん?)。

今さら私の公約違反など皆さん慣れっこだと思うので、くどくど言い訳はしないが、一応おさらいの意味も含めて、もう一度サーフェイサーについて書いてみるつもりである。

以前私がサーフェイサー批判をした時は、サーフェイサーの機能を箇条書きにして、それぞれについて自分なりの検証を加えてみた。もう一度それを書き出してみると、

1. パーツの表面状態を確認する。
2. パーツ表面のキズを埋める。
3. 上塗りする塗料の付着性を向上させる。
4. 下地色を均一にする。
5. 塗装面のシンナーの吸い込みを均一化するため、表面全体を均質な塗膜で覆う。

の5つであった。そして1.と2.については、基本的に塗装以前の段階で処理しておくべき問題である、とし、4.と5.については、通常の塗料で充分その機能を果たす、としたが、唯一、3.については体験的なデータが不足しており、まだ結論は出していない、と態度を保留していた。

1.2.4.5.に関しては今でも同じ意見であるが、私が転向んだ理由は、3.の塗料の付着性の問題であり、つまりサーフェイサーと言うよりはプライマーとして使用していると言った方が正しい。

インジェクション・キットはともかく、ウレタン製レジン・キャスト・キットを塗る場合、塗料の喰い付きと言うのは私にとって長い間悩みのタネだった。

ここ数年間は自動車塗装用のラッカーを使用しているのだが、様々なトラブルに見舞われる事が多く、さらにその下にソフト・ビニール用の塗料を塗ってみたり、色々と試行錯誤を繰り返していたのである。

そんな事をする前に素直にプラサフを使え! と思われるだろう。今思えば確かにその通りなのだが、中途半端な知識が邪魔をしたのである。

本来、プライマーとサーフェイサーと言うのは正反対の性質を持った物であり、ただ単にサーフェイサーにプライマーが混ぜてあるだけでは、きちんとした効果が出る筈はないと思っていたのだ(これについては以前に書いたので、お持ちの方はそちらを参照されたい)。

さらに言えば、被塗物が変わればプライマーの種類も変わる筈であり、それも金属用、プラ用などと言う大まかな物でなく、同じ金属でも鉄、シンチュウ、アルミ等の種類別に違い、同様にプラスチックもスチロール、ウレタン等それぞれで必要とされる前処理は違う物なので、そう便利なオールマイティのプライマーなどある訳が無い、とプラサフには最初から不信感を持っていたのだ。

結局、決定的な解答を持たないまま、とりあえず私が採っていた方法は、パーツのほぼ全面を瞬間接着剤でコーティングしてからペーパーをかけると言う実にオソルベキ物だったのだが、昨年末に、とてもそんな悠長な事はしてられないスケジュールでガレージ・キットを仕上げるはめになり、さすがの私も白旗を掲げ、サーフェイサーとラッカーパテを使う伝統工法に頼らざるを得ないと腹を決め、数年振りにタミヤパテを買ったのだった。

そしてサーフェイサーだが、まず具体的にどのサーフェイサーを使うかが問題になる。そこで手持ちの資料をあたり、これはと思うレベルの内容を持ったウレタン・キットの製作記事をピックアップして行くと、何と選んだ記事の全てが”ソフト99”のプラサフを使用していたのである。これは、四の五のリクツを並べる前に試してみるだけの価値はあると思い、さっそく一本買って、すぐに製作に入った。

結論だけ言おう、充分に効果があったのである。

鉄板用のプラサフなんぞがウレタン樹脂に効く筈が無い!なんて小リクツの数々は木っ端微塵である。そしてそれ以来特別な事が無い限りウレタン・キットにはソフト99のプラサフを使う事にした。

以上が私の転向の偽らざる経緯である。まったくこれでは社民党はおろか、一連の自民党復党組すら罵る事はできない(こんにちは、転び伴天連です)。

現在私が行っているウレタン・キットの塗装法を説明しよう。サンディング等の下地処理を終えたパーツには、まずソフト99のプラサフを出来る限り薄く、全体に吹く。これは前述の通りプライマー効果だけを期待しているからであり、このため、プラサフは予め中身を別の容器に取り出し、ラッカーシンナーで2倍に薄めてエアブラシで吹いている。

それからラッカーパテでピンホール等の処理をする(おぉ、何て普通なんだ!)。以前にも書いた通りパテと言えども塗料の一種なのでプライマーの上から使った方が効果があがるのだ(書き忘れたが、プラサフ以前の下地処理の段階で、目に付く欠陥は全て瞬間接着剤等で処理済なので、ここでのラッカーパテは、あくまでも「落ち穂拾い」である)。
さて、パテ研ぎが済むと当然あちこちで下地が顔を出してしまうので、もう一度プラサフを吹くが、ここではプラサフと自動車用ラッカーを混ぜた物を使用する。これはプライマーの混ざった物を厚塗りする度合を少しでも下げたいのと、サーフェイサーの粒子の荒さを少しでも和らげたい、と言う事でこうした方法を採っている。[ 註3 ]

これについては、後にソフト99タイプのプラサフは厚塗りOK、と云う事が判明しました(詳しくは、98年版、「プラサフ」の項にて詳述)。ただ、粒子の粗さが問題なのは確か。現時点では、粗めの粒子をわざと沈殿させて、上澄みを使用する、と云う方法を採っています(どこまで沈殿させるかの加減が難しい)。

ここでやっと通常言われる「サフ研ぎ」に入るのだが、ここではもうなるべく下地を出さない様に注意する。この上からラッカーで化粧吹きをして肌を整え、後はMr.カラー等の模型用塗料を使った通常の塗装に入る、と言うのが大まかな所である(以前の本稿を読んでいない方の為に一応書いておくが、本稿において「ラッカー」と表記する場合は、いわゆる「ラッカー系」の事ではない。私は実車の塗装に使われる「ラッカー」を多用するため、ここの区別は厳密にしている。「ラッカーシンナー」も同様であり、いわゆる「ラッカー系」についてはそれぞれ「Mr.カラー」、「S.D.E.シンナー」等、メーカー名を明記する事にしている)。

以上が現時点でのウレタン・キットに対する私の対処法であるが、まだ固まった物とは言えず、これからも変化して行く可能性が大きい。[ 註4 ]

註3でも書いた通り、どんどん変わってます。これについてはいずれまたネタとして取り上げるかも…。

カー補修用グッズの中にはまだまだ使える物がたくさんありそうで、今注目しているのは「ウレタン・バンパー用プライマー」と言うのが使えるのではないかと思っている所である。

ここで先日、当会メンバーのH沢氏から、造形村で出ている離型剤落としのスプレーが結構使える、との報告があった。表面に吹いてふき取るだけで何とあのコトブキヤ製のウレタン・パーツの離型剤が落ちた!と言うのだから効果は充分である。

何故、突然こんな話が出るのかと言うと、実はこのスプレー、中身はソフト99の99工房シリーズで出ているワックス取りスプレーであり、パッケージを替えただけで、値段を上乗せして出したと言うシロモノなのである。

以前にも書いた事だが、模型店流通の工具や材料(特にガレージ・メーカー・ブランドの物)の中には、こう言う温泉まんじゅうの様な商品が多く、ワークの「みがいて万年」等がその代表だったが、最近ではこの造形村のシリーズが温泉まんじゅうのオンパレードである。[ 註5 ]

う~ん、何て偉そうなんでしょ。ここの表現については94年版の註でも書いた通り、反省すべき点ですね。模型店以外に材料入手の道がない、と云う環境のモデラーが結構多い事はネットを通じて再認識させられましたし。

広告を見ただけで明らかに99工房シリーズとわかるのが、前述のスプレーと液体コンパウンド、それにサーフェイサーもおそらくソフト99のプラサフだと思われ、詳しく見て行けばもっとあると思う(一度、こうした商品の元ネタの対応一覧表などと言うのをこのページでやってみたい気もする。少なくとも商業模型誌では絶対出来ない筈だ。ただ、こんな弱小パンフでも多少コワい気はするが……)。

温泉まんじゅうなら箱絵が違うだけですむが、こちらは流通の関係上、必ずと言って良い程割高になっているので始末が悪い。ただ造形村のシリーズには必ずパッケージに製造元の表示がされているので、それを見れば大体元ネタの察しはつく、後はDIY店等で元の商品を買えば良いのである。[ 註6 ]

註5の部分を含め、ここは伏せ字、または削除した方が良いのでは、とも考えましたが、一応全てそのまま再録してあります。ボークス、及びワーク関係者の方、この内容に異議がある場合は掲示板にてご意見ください。適切に対応したいと思っています。

以上、ウレタン・キットについて書いて来た訳だが、インジェクション・キットはどうしているかと言うと、こちらは今まで通り、サーフェイサーは使っていない。Mr.カラーはスチロール・プラの上に直接塗っても、下地地理をきちんとして、表面をペーパーで適度に荒らしておけば密着性に殆ど問題は無いので、サーフェイシング作業にはMr.カラーをそのまま使用している。

もっとも、私の事だからこれも何時まで続くかは保証の限りではないが、これ以上前言を翻す様なマネはなるべくしたくない物だとは思っている。[ 註7 ]

予想通り見事に翻りましたね。密着性についての見解は現時点でも変わっていませんが、作業時間短縮の目的からMr.サーフェイサー1000を使用する様になっています(2000年版原稿に関連項目あり)。

とにかく今となっては、明日の自分が××教の信者になっていたり、嬉々としてカラオケに興じる人間にだけはなっていない事を祈るのみである(P.S. 肉の脂身はいまだにキライである)。

[ホコリ](Dust)

前回のパンフレットでは、グロス塗装の最大の敵として、塗料のカブリについて書いた。これは現在私にとって最大の問題の一つなので力を入れて取りあげた物だったが、これについてリアクションは皆無であった。それに比べて、「充分対処が可能」と一、二行で済ませたホコリ対策については、事あるごとに「どうすればここまでホコリを付けない塗装が出来るのか?」と言う質問を再三に渡って受け、改めて彼我のギャップに気付かされたのだった。

ホコリ対策についてはだいぶ前になるが当パンフでも書いているし、私自身としてはグロス塗りに走り始めた頃には殆ど解決済みだったので、今更ホコリについて書く事も無い、と思っていたのだがこれだけリクエストが多いと言う事で、もう一度きちんとホコリ対策について書いてみようと思う。

まずはホコリの種類であるが、これは大別して、

甲) 粉末状のホコリ。
乙) 繊維状のホコリ。

の2種類がある。そして作業段階別に分けて見ると、

(1). 塗装前にパーツ表面に付いているホコリ。
(2). 塗装中に表面に飛び込んで来るホコリ。
(3). 塗装後、乾燥中に降って来るホコリ。

に分けられると思う。

以下、それぞれについて説明すると、まず甲)のタイプであるが、これは殆どが(1)
の段階で見られる物で、大体がペーパーがけの時の研ぎカスである事が多い。

乙)のタイプは、(1)~(3)全ての段階において手ごわい敵であり、塗装中のホコリ対策と言うのは殆どがこいつとの戦いである。

ここでホコリ対策の3大原則を書いておこう。

a). 塗料をのせる前には必ずパーツの表面をチェックし、自分の眼に見えるホコリが「全て」取り除かれるまでは、「絶対に」塗装を始めない。

b). 塗装作業中にはホコリが立つ様な行動を一切しない。もしホコリを立ててしまったら、そのホコリがおさまるまで塗装作業を中断する。

c). 塗装中パーツ表面にホコリが付いてしまったら、即座に吹きつけを中止し、ホコリの状態を確認する。その上で取り除いても大丈夫と判断出来た時に限り、ピンセットでホコリをつまみ取る。

と、以上の3つである。ひらたく言えば、ホコリを付けない、ホコリを立てない、それでも付いたらピンセットで取る、とこれだけの事である、おわり。

……と以前はここまでだった。今回はもう少し突っ込んで、実際の塗装の段階に沿って、具体的な対策について述べて行く事にする。

まず(1)の段階だが、ここでの対策は比較的単純で明解だと言って良い、直接パーツに触る事が出来るのだから、とにかくじっくりとパーツをクリーンアップすれば良いのである。

その為この段階でパーツを水洗いする人もいるが、好みの問題で私はやらない。ただ表面に油汚れが残っていると言うのは絶対にまずいので、ここで困らない様にパーツの下処理作業の間は、必ず左手には手袋をして作業をしている(これはあくまでも私の好みの問題なので、皆さんにはお勧めはしない。要は塗装段階でパーツ表面に油分がついていなければ良いのだから、各自が好みの対策をすれば良いのである。ウェット・ティッシュで拭く、なんてのもアリだと思う)。

乙)のタイプのホコリには、ピースでエアーを吹きつけて吹き飛ばすのが一番お手軽かつ有効な方法だが、これだけでは表面にへばりついた甲)のホコリが残ってしまい、かつこれは非常に視認しづらいので、私はまず、乾いたきれいなティッシュでパーツ全面を拭ってからエアーでホコリを吹き飛ばす、と言う段取りを踏んでいる(乾いたティッシュでパーツを擦ると静電気が発生してホコリが吹き飛ばせなくなる事があるが、この場合は指先で軽くパーツに触れてアースしてやると、大抵解決する)。[ 註8 ]

ここでは簡単に済ませていますが、これは冬場の乾燥期にはかなりやっかいな問題です。導電性繊維で出来た、「OA用ダスターブラシ」で塗装直前のパーツのホコリ落としをしていますが、それでも完璧とは云えません。業務塗装用途では、静電気対策として、イオンブロワーや、イオンシャワーなんて製品まであるくらいです。

上にあげた方法以外にもホコリを取る工夫は各人色々あるだろうし、それは何であってもかまわない。とにかく、この段階で一番大切な事は、たとえそれが用意万端整って、さあ塗装直前、と勢いこんでいる時であっても、パーツ表面にホコリ(そしてそれに限らず何であれ表面の欠陥)があるのに気付いたら、それを処理し終わるまでは「絶対に」塗装作業に入ってはいけない! と言う事である。

これは何度繰り返しても言いすぎではないし、逆に言えばこれさえ肝に銘じておけばこの段階はOKなのである。

さて、パーツの状態が整ったならば、いよいよ(2)の段階に入るがここではb)とc)の両原則が共に絡んでくる。

しかしここでまず確認して置きたいのは、原則c)はあくまでも最後の手段であり、やらずに済ませられるなら、それがベストだと言う事である。

つまり、最大限の努力を払って原則b)に徹する事が第一であり、そこまでしてもなお、ホコリが付いてしまった、と言う時に初めて、やむを得ず採る手段が原則c)なのである(「馬鹿!ホコリを立てる奴があるか!! ピンセットは最後の武器だ! 俺たちは、忍者ぶ……いやモデラーズ・スペースだ!!!)。

この原則b)を徹底する為には、塗装作業中の努力も勿論大事だが、もっとも重要、かつ必要不可欠なのは事前に周到な準備をして置く事である。

私の塗装法に関しては色々と噂があるらしく、中には、あいつは塗装前に部屋中に水を撒いている、なんて言うのまであるらしい。

勿論そんな事は無いし、私の部屋の汚さと言えば、これは間違いなく、平均的モデラー並か、あるいはそれ以上である事は自信を持って言える。ホコリにしたって健康を害するのに充分な量がしょっちゅう舞っているし、部屋のAV機器の寿命が短いのも間違いなくそのせいだ。こんな環境でも幾つかの配慮をする事で、ホコリに悩まされる事なく塗装ができるのである。
塗装作業中の行動の中で最大のホコリの原因は、実は椅子の座り直しである。

そんな事でホコリが立ってしまうのでは、ホコリを立てないなんて不可能だ、と思うかも知れないが、逆に、それならば塗装作業中には絶対に椅子から立ち上がらない、と決めてこれを実行すれば、それだけでホコリの発生量は大幅に抑える事が出来るのである。ただしそれを実現する為には、塗装中に必要となる全ての物を、前もって自分が立ち上がらずに手が届く範囲内に配置しておく事が不可欠となる。

塗装する全パーツ、エアブラシは勿論の事、パーツ乾燥用の支持台、使用する全ての塗料とシンナー類、最後の武器たるピンセット、さらには塗装中に欠陥を見つけた時の為にペ一パー類や、ティッシュなんぞも用意して置きたいし、レギュレータを使用している場合は、それにも手が届いて調整出来る方が良い。

こう書いて来ると、前回に「レイアウト」の項で紹介したU字型レイアウトは、ホコリ対策の面からも理想的な物である事が改めて納得出来る事と思う。事務椅子を回転させるだけで、塗装だけでなくあらゆる模型製作のために必要な物に手が届く様に出来る訳だから、塗装中に起こるであろうアクシデントの殆ど全てに対して、座ったままで対処出来る筈である。

勿論前回も述べた通り作業環境は各人皆違うわけだから、誰もがUの字レイアウトにすれば良いと言う物では無いし、現に私だってL字型レイアウトである。重要なのは、どんな形にせよ、塗装中に立ち上がらなくて済む様にする事なのである。

ただ、そうは言った物の、絶対に立ち上がらないと言うのは事実上不可能だと言うのは私も認めざるを得ない。

私だって塗装中トイレにも立つし、電話も鳴ったら取らなきゃいけない。特に私の場合数時間連続で塗装する事が多いし、最近のMGシリーズの様にパーツ数の多いロボット物なんぞを塗る際には、全パーツに一通り塗料をのせるだけで2、3日がかりなんて事もある訳で、とてもじゃないが絶対に立たない!なんて事はムリである。

そこで、一旦ホコリを立ててしまったらどうするか、であるがこれも原則b)にある通り、ホコリが落ち者くまで待つ、これしか無い。

ただ、何もしないでポケッと待っているだけではホコリと言うのはなかなかおさまってくれる物では無いので、なんとかこれを少しでも早めたい。前回のパンフでは塗装のために有効なインフラの一つとして強制排気装置(つまり換気扇)をあげたのだがこれがあるとホコリの収まりがかなり違って来るのである。

私の所には前回も書いた通り超・強力な換気扇がある為、一旦舞い上がったホコリも、十秒も待てば殆ど吸い出してくれるので、ホコリ除去の意味からも大きな戦力になっているのだが、そう簡単に導入出来る物ではないのも確かである。

本式の換気扇がベストなのは明らかだが、そこまでしなくても次善の策として、窓に向けて扇風機を廻すだけでも、ホコリを落ち着ける程度の事は出来ると思う(やってみた訳では無いので確証はないが、試してみる価値はあると思う)。

この場合気をつけなければいけないのは、前回も書いた通り吸気口の確保である、扇風機を向ける排気口の他に、新気を取り入れる吸気口が無いと、吸い出した筈のホコリが又吹き返してしまうので、必ず別に吸気口を、それもなるべく排気ロから離れた所に開けておく必要がある。

以上の様な努力によって、ホコリは激減させる事が出来る筈だが、どうしてもゼロには出来ない、つまりいくつかはホコリが付く事は避けられない。ここでいよいよピンセットの登場である。 原則c)において一番重要なのがこのピンセットであり、この品質が全てを決める。身もフタもない言い方になるが、最高級のピンセットを買う以外に道は無いのである(最低でも3000円は覚悟しなければいけない)。

この目的に要求される精度と言うのは、具体的に書くと、「パーツ表面にべったりと寝た状態で、どこも表面から浮いた所の無い単繊推のホコリをつまみ上げる事が出来」なければいけない。

つまり先端どうしが正確にピンポイントで合っていなければならないのであって、これは一般に市販されているピンセットの中では限界の精度と言って良いだろう。

具体名をあげてどこのメーカーの何、と指定出来ればその方が良いのかも知れないが、私もそこまでピンセットに詳しい訳では無いので、多少曖昧ではあるが、なるべく現実に則した説明をすると、東急ハンズの彫金コーナー(特に渋答店がバリエーションが豊富でオススメ)に並んでいるピンセットの中で、セラミックや、防磁性合金などの特殊材料では無いただのステンレス製でありながら、3000円以上する物、という解った様な解らない様な説明になる。[ 註9 ]

ピンセットについては、2000年版の原稿で、具体的な商品名と価格入りで紹介しています。また、飛行機モデラーの黒須吉人氏が、SA誌上において、写真入りで詳しい解説をしておられるので、これも(と云うかこちらの方がよっぽど)参考になります。

東急ハンズだったら、店員に頼めばショーケースを開けてくれると思うので、現物の精度を確かめて買う事が出来る筈だ(その時ついでに1000円前後の物も手に取って比較してみれば、価格による精度の差が良く理解出来ると思う)。

そして形については、ストレートの物はこの目的には向かないので止めた方が良い。ホコリを取る為には鶴首型に代表される、先の曲がった物の方が絶対使い易いので、ぜひこちらを買う事をお勧めする。

汎用性の面から他の形にしたい、と言う方もいるかもしれないが、このピンセットは、精度を保つ為には塗装中のホコリ取り専用にするべきで、他の事には絶対使わない様にした方が良い。つまり汎用性は考えてもしかたないので、こうして先曲がり型を強く勧めている訳である。

そして、使わない時はきちんとしまって置く事、一度でも床に落としたら、まず間違いなくポイントが狂ってしまうので、それだけで3000円が水の泡になる。

「そんなにリスキーな物に3000円も投資するのはいやだ、1000円ぐらいで何とかならないか?」とは良く言われる。

実は1000円のピンセットを高精度に研ぎ直す事は可能だし、現に私も何度かやった事はある。

ただ問題は、たとえそれに必要な技術を持っていたとしても、目標とする精度の物に実際に触れた事が無いと、どう研ぎ直せば良いのかが解らないので、手のつけ様が無いのである。ここはやはり、3000円の出費は避けられない物として受け入れて頂く他はない。

では、実際にどうやってホコリを採るかの説明に入る事にしよう。塗装中のパーツ表面にホコリが飛び込んで来たのが見えたら、即座に吹きつけを止め、そのホコリの状態を見極める。大抵の場合はどこかが表面から浮いている物なので、そこを狙い済ましてピンセットでつまみ採るのである。

ソリッド色なら、このケースの場合は殆どダメージを残さずに済むのだが、メタリックやパール色の場合はそうも行かない事が多い。ホコリを取り去っても、メタリック、パール顔料の「目」がホコリの形通りに乱されているので、跡が残ってしまう。こうなったら手の施し様は無く、悪態の一つでもついてあきらめるしかなくなるので、メタリックやパールの仕上げ吹きでは、特に原則b)を徹底しなければならない。

そして、運悪くホコリが完全に寝てしまっている場合だが、このケースでは採らない方が良い事も多く、難しい判断を迫られる。 ソリッド色だったらそのまま塗りつぶせば解らなくなる事も多いし、メタリック、パールの場合は先に書いた通り採っても跡が残るうえ、無理に採ろうとしてもさらにひどい跡を付けるだけなので、まず採らない方が良い。

ただ、色的に目立つホコリだったりして、危険を冒してでも、どうしても採らざるを得ない事もある。あれ程までにピンセットの精度に拘ったのは、正にこう言う最悪の事態に備えての事であり、そのための最高級ピンセットなのである(まさしく「最後の武器」なのだ)。

そして、段階(3)である。 塗装が終わった後の塗料の乾燥待ちの事はセッティングと呼ばれ、カーモデラーの中には、この為に専用のセッティング・ブースをわざわざ設けている人もいるくらいだが、私個人の経験から言うと、セッティング中にホコリでひどい目に遭ったと言う記憶は無い。

パーツが乾燥するまできちんと保持出来る支持法さえ確立すれば特にホコリは気にしなくても良いと思う(勿論「常識の範囲内で」の事である、間違ってもセッティング中に部屋の掃除などしてはいけない)。
さて最後に、ここまでわざと書かないで来たのだが、最も重要な事について述べておきたい。「照明」である。

ここまで書いて来た全ての塗装工程、そしてもっと言えばそれ以前の下地作りを含むあらゆる作業は、全て適正な照明条件の下に行われて、初めて効果をあげる事が出来る。

前回も照明の重要性については書いておいたが、これはいくら強調してもし足りないくらい大事な事だと私は思っている。

ホコリ対策と言うのは、何よりもまずホコリを見る事が出来なければ何もはじまらない。例えば、(1)の段階でパーツの表面をチェックするにしても、貧弱な照明の下ではそもそもホコリ自体を見る事が出来ない。

前回も書いた通り、直射日光の下で見ても欠陥が出ないくらいでなければいけないのだから、とにかくまず明るくなくてはいけないのだ。私が使っているのは、60Wの白熱電球と30型の蛍光灯が一緒になったタイプのZライトだが、作業の時は必ず、これを顔のすぐ前までもってきてパーツを照らす様にしている。

そして(2)の段階においても、自分の廻りにどれくらいの量のホコリが舞っているのかを把握し、かつ表面についたホコリの状態を見極めるためにはやはり適正な照明が不可欠となる。

具体例をあげて行けばキリがないので、このくらいにしておくが、とにかく可能な範囲内での最高の照明設備を揃える努力は、決してムダにはならない。照明は最重要ポイントである事を再度力説して、この項を締めくくる事にする。

後記

今回も最後まで読んで頂いた事に感謝する。当展示会もすっかり定着して来てうれしい限りだが、それは一方で、停滞にもつながりかねない状況でもある。一部で、メンバーだけでなく観客の方も毎年一つずつ平均年齢が上がっている、などと囁かれているのも単なる冗談だけでは済まされない。そんな中で、一人でも多くの新しい人にアピールすれば、とあえて以前取り上げた題材を今回また改めて掘り下げてみたが、いかがだっただろうか。

例によつて内客に関する質問、乾燥、反論、等々は直接、私石川まで、という事で次回に続く(つもりです)。