欠陥模型大百科・改訂版
ENCYCLOPEDIA MODELLICA revised” version
Private Edition Ver5.3.1
石川雅夫(MMI/LIMEGREEN)
第7回モデラーズ・スペース展示会(1996年)
[アートナイフ](Art Knife)
今年も、もはや完全にお約束と化した感のあるこの項から始めることにする。と言っても、基本的な事は前回であらかたおさえてあるので、今回は昨年の展示会以降の状況変化について述べる事にする。具体的に言うと、「遂に、あのNTが『アートナイフ』を出した!」のである。
おそらく今年に入ってからの事と思われるが、NTから、「大型デザインナイフ・DL-400」と言う商品が出た。これは名前こそデザインナイフとなっているが、「大型」と付いているだけあって、前回の本稿で(私が勝手に)定義した「デザインナイフ」サイズの物ではなく、言ってしまえばオルファの「アートナイフ」規格のコンパチ商品である。
厳密に言うと、替刃の形状が少し違う(長さが数mm短かく、ポイント角も、ほんの少しだけ鈍角)が、刃厚、及び刃幅は同じなので、2社製品間相互の替刃のつけ替えは何の問題もなく行える。つまり冒頭に書いた様に、これはまさしく、「NTから出た『アートナイフ』」なのである。
今日まで、NTは「デザインナイフ」サイズの製品しか出していなかったが、今回あえてこの製品を出してきた事は、モデラーにとって(少なくとも私の様なNT派にとっては)嬉しい事件である。しかし、これだけでは「アートナイフ」における、オルファの牙城を崩すのは無しいと言わざるを得ない。そこで私がNTに期待するのは、「デザインナイフ」に続いて、この「アートナイフ」サイズでもポイント角45度の替刃を出す事である。現在、「デザインナイフ」用の45度刃は、NTだけが出しているが、同じ事を「アートナイフ」のサイズで行えば、ある程度のシェアは確保できるのではないだろうか(少なくとも私なら絶対買う)。
前回にも書いたと思うが、NT,オルファの2大力ッターメーカーの間には静かな確執と言うか、ある種の対抗意識、意地の張り合いの様な物が存在する。この新製品の名前が「大型デザインナイフ」になった理由も明らかにその辺に原因がある筈で、おかげでただでさえ混乱気味だった私の分類(「アートナイフ」と「デザインナイフ」)は、正に混乱の極みとなってしまった。いい加減この辺で誰かがきちんとした分類基準をつくって欲しい物だが、こんな事に拘っているのは私ぐらいの物なので、この混乱はいつまでたっても続くのだろうと思われる。この原稿を書いている時点では、このNTの「大型デザインナイフ・DL-400」が置いてあるのを確認したのは新宿の世界堂本店だけなので、まだ殆どの人が見た事がないと思うが、興味のある人、そして私の様にオルファイエローを見るだけで虫酸が走るといったアンチオルファの方々は、新宿のイエローサブマリンヘでも寄ったついでに、世界堂本店で、このDL-400を買ってみてはいかがだろうか。
大抵の人にとっては「だからどうしたの」といった程度の物だろうが、少なくとも私としては、あの醜い黄色のホルダーだけは絶対に許せないので、このNT製品の発売はうれしい限りである。
ただ、ここで誤解して欲しくないのは、私はオルファ製品をけなしている訳ではない、と言う事である。オルファ製品が良くない、と言うのではない、ただ単に、オルファが嫌いなだけなのだ。だから理由を聞かれても答えようが無い。良い悪いに理由はあるが、好き嫌いに理由は無い(あると言う人もいるだろうが、その場合は殆どが後から付けた理屈で、本人がそれに気づいていないだけである)。
少なくとも私のオルファ嫌いに理由はないし、実は、オルファの創業社長の故・岡田良男氏の事は尊敬していたりする。ただ単にカッターナイフと言うシステムを発明し、それを国際化しただけにとどまらず、常にその改良を志していた氏のすごさは、例えば、滑りにくく手になじむ形のカッター柄を創る為、石けんで試作品を造って風呂場で握って試してみた、と言ったエピソードひとつからも充分うかがう事ができる。それでも尚、オルファが嫌いな事は変わらないのだから、これはもう理由など付けようが無いのである。
「本田宗一郎は好きだが、HONDAはキライ」であるとか「長谷川龍雄は尊敬するがカローラは死んでも買わない」といったような事である(これの究極が、天才・山上たつひこ先生のギャグ「女は嫌いやけど、女陰は好っきやあ~!!」であろう)。
[替刃式メス](Surgical Scalpel)
この項も、前回書いた内容の後フォローが中心となる。
前回は、替刃の種類については、番号によってその形状が決まっている事を書いたが、専用のホルダーにもサイズの違いがある事を紹介するのを忘れていた。
最も一般的なタイプは、NO.3と呼ばれるタイプで、前回紹介した,NO.10から、NO.15までの替刃が取りつけられる様になっている。
大抵の場合は、このタイプしか入手できないので、前回は特に説明しなかった訳だが、私が価格を紹介した、渋谷の東急ハンズの彫金コーナーにはあと2種類、NO.4とNO.7と言うタイプのホルダーが売られている。
特にNO.4については、形状も大きさも殆どNO.3と一緒で見分けがつきにくいのだが、これには10番台の替刃は取付けられないので注意が必要である。こちらには20番台の番号がついた。一回り大きいシリーズの替刃がつく様になっているのだが、番号を見ない限りNO.3とNO.4のホルダーの違いはまず見分ける事ができないので、買う際には必ず番号を確認すること。売り場では現在この2つは並べて売られているので特に紛らわしいのである。
そして、もう一つのNO.7のホルダーの方は、非常に細長い形をしているが、替刃はNO.3と同じく10番台のシリーズがつく様になっている。かなりの細長なので、重量バランスの点などから好みが別れる所だろうが、私は愛用している。
実は前回のパンフの後で、このNO.7だけが1000円から2000円へと突然の劇的な値上げをされたのだが、先日これまた突然に1000円に戻っていた。正に「This is 東急ハンズ」な価格変更ではあるが、2000円で買ってしまった人の恨みはいかばかりであろうか。
[換気](Ventilation)
この原稿は、当展示会がパンフレットを作る様になって以来続いているのだが、最初は塗装講座として何か書いてほしい、と言う依頼だった。
ここ数年は、私の興味が刃物関係に集中していたせいもあって、工具類に関する項目が多くなっていたが、今年は久しぶりに塗装中心に話を進めて行こうと思っている。ただ、塗装それ自体については以前の本稿で取り上げているので、今回は塗装作業を支える周辺の事柄について述べてみようと思う。
題して「より良い塗装環境をシステム化するためのインフラストラクチャー講座」。
そして先ず、この項では「換気」についてである。
ある程度コンスタントなぺースで模型を作っている場合、作業スペースの換気はかなり重要なテーマになってくる。これは各人の作業環境にも大きく左右されるので一概には言えないが、塗装作業が終わってみたら、部屋中がびっしりと細かいホコリで真っ白になっていた、とか、塗装をしたり、ポリパテを使った作業をして、気が付くと家族の目が真っ白になって冷たくこっちを見ていた、等の経験はかなりの人が思い当たるのではないだろうか。
こういう場合には根本的な対策としては換気扇を取り付けるしかないのだが、本格的に取り付けるとなるとかなり大掛かりな工事が必要であり、模型誌のライタークラスのモデラーでも二の足を踏んでいると言うのが実状である。
それでもどうしても換気扇は取り付けたいと言う場合、多くの人が選ぶのが「窓用換気扇」である。これなら壁に穴を開ける必要もないし、雨や風が強くなったら窓を閉めれば良いので専用シャッターも必要ない(この専用カバー兼シャッターと言う奴が実は意外に高価なのである。本体より高いと言うのもザラなのだ)。
具体的な取り付け等に関してはケースバイケースだと思うので、家電店やDIY店等で各自相談してもらうしかないが、2点だけ重要な事をあげておくと、まず一点として、取り付け条件が許す限り大型の物を選んだ方が良い、と言う事がある。
換気扇のサイズは25cm、30cmと言った具合に5cm刻みのファンの直径で規格が決まっているのだが、少なくとも、30cm以上のサイズの物をお勧めする。
換気能力は大きいに越した事は無いし、能力に余裕があればコントローラーで回転数を落として騒音を下げる事が出来るからである(家庭用の換気扇と言うのはコストを下げる為に換気効率が低くなっており、その分騒音については、実は業務用の物よりうるさいのである)。
さてそれから、もう一点についてだが、換気扇を回す際には、換気能力に見あった吸気口を必ず確保しておく事である。
いくら大きな換気扇を取り付けても、吸気口をきちんと確保しない限り、どんなに強力に換気扇を回してもその場でカラ回りをするだけで、空気は殆ど動いてはくれない。これは単純な事だがそれだけに逆に忘れがちで、しかもとても重要な点である。
さらに言えば吸気口の位置も重要なのだが、いくら理想的な場所に窓やドアが無いからと言って、その為に壁に穴を開ける訳には行かないので、これについてはなるべく換気扇から離れた場所(出来れば部屋の対角線上がベスト)の窓やドアを開けて吸気口とすれば良い。吸気口も大きいに越した事は無いので、複数の窓やドアを開けておく、と言うのも手である。
この項に関してはいつもの様な、私はこうしている、と言う書き方をしてこなかったが、実は私は換気についてはやたらと恵まれた条件にある為、殆ど参考にはならないと思うのである。
2年程前、実家が家を新築したので、その際に自分の部屋に業務用の有圧型換気扇とその周辺の一切(屋外フードだの電動シャッターだの)を最初から造り付けにしてしまったのだ(工事に来た人は、一般の住宅にこんなものを付けて一体何に使うのか不思議がっていた)。
ここまでやれる人はまずいないと思うので、あえて細かい点について書く事はしないが、有圧発生型換気扇と、その周辺のオプションをそろえると、それだけで下手なエアコンを買うよりもよっぽど高くなってしまった事だけはお知らせしておく(それでも換気扇自体はせいぜい2~3万円ぐらいの物なのである。オプションがいかに高いかお解りいただけると思う)。
ただ予想外だった事は、さすが有圧換気扇、業務用だけあって30cmタイプでも充分すぎる換気能力を発揮する為、夏場の暑さがこいつを回すだけでも結構しのげるのである。元々私はどちらかと言えば暑さに強いタイプな事もあって、昨年夏のあの狂気の様な暑さも、この換気扇とクリップ式のオモチャ扇風機だけで、ほとんどクーラーには頼らずに乗り切ってしまったのである。
勿論良い事づくめではない、冬場は同じ理由からこんどは地獄が待ち受けている。冬場は乾燥している為、湿度の上がる夜中でも塗装が出来るので、スケジュールがきつくなって来るとついつい、深夜に塗装をする事になってしまうのだが、塗装の際には換気扇を回さない訳には行かず、たちまち室温は戸外並みにまで下がってしまう。
なまじ換気能力が大きい為、暖房なども役に立たず、結果として部屋の中で外出時の様な重ね着をして、コートをはおり靴下を履いて塗装をすると言う、とても家族には見せられない事態が出現するのである。しかも一番冷える手については手袋はホコリの原因となるので素手で作業するしか無く、数時間も作業すると手がかじかんでくる。昨年も出品したあのザンザ・ルブなどはこうした環境の中、下塗りの白吹きだけでも8時間はかかっている(塗料の量としては、Mr.カラーの白にすると20本分)。好き好んでやっている事とは言え、バカと言われても仕方ないなとは正直思わざるを得ない。
最後に、どのメーカーの換気扇が良いかと言う点について全くの私見ではあるが、私は三菱製品をお勧めする。
たかが換気扇など、どのメーカーでも大して変わらないと思われるだろう。実際、私も直接比較した訳ではないので、偉そうな事は言えないのだが、一つ言える事は、流体力学・空気力学と言う奴は、解っている様で未だに一筋縄で行く物ではない、と言う事である。
空力の難しさと言うのはF1等を見ているだけでも充分察せられるし、回転翼の効率と言うのも、シビアな勝負の世界である競艇の選手の重要な能力の一つに「ペラ打ち」(プロペラの形をハンマーで叩いて修正し、トルク等の調整をするチューニングの事)が上げられる事からも、その難しさがうかがえる。
さて、そこで空調といえば思いうかぶのが、あの「乾電池からミサイルまで」でおなじみの三菱電機である。伊達や見栄でミサイルなどつくれる訳がない。国内家電メーカーとしては唯一、自前の風洞を持っている実力、それで足りなければさらにその後ろにはあの三菱重工が控えている。やはり、こと、空力モノ・空調機器においては三菱の実力は他社より一歩抜きんでている、と言って良いと思う。[ 註1 ]
最近では、各社から「換気扇セット」や「塗装ブース」のたぐいが出されています。住宅事情等を考えれば模型用途には適しているでしょうし、結構評判も良い様です。これに問題はありませんが、原則論として、「ダクトは排気効率の敵」である事だけは書いておきたいと思います。また、窓からダクトを外に出すだけでは、必ず同じ窓の空いた所から吹き返しが起こる事は認識しておいて欲しい所です。 |
[湿度](Humidity)
塗装の為のインフラ講座、続いてこの項では湿度とカブリについて取りあげる事にする。
私の様に、Mr.カラーをメインに使ってグロス塗装をしよう、と言う場合、最大の敵が湿気によるカブリである。一般的にはホコリや塗料のタレなどが問題とされる事が多いが、これらはいずれも自分で環境その他をコントロールする事によって対処する事が可能である。しかし湿気に関しては、換気をする事が大前提である以上、自分でコントロールする事はまず不可能となる。
先ず、カブリのメカニズムについて説明すると、これは基本的には冷たい飲み物が入ったコップが汗をかく現象と同じ原理による物である。
塗装中のパーツの表面は、塗料のシンナー分が蒸発する時に気化熱を奪われる為、室温より冷たくなる。そして空気中に一定以上の水分があると、その冷えた表面で結露して水滴となり、正常な乾燥過程を妨げる、これがカブリであり、軽度の場合は表面のツヤが消えたり、梨地になる程度だが、ひどい場合は目に見える程の大きさの水滴がいくつも付いて、こうなると塗膜が引きつれた様になつてしまう場合もある。
私も数年前まではこの辺の事が良く解っていなかった為、梅雨時の夜中に塗装をしてひどい目に遭い、それでもまだその現象がカブリだとは解らなかったと言う事があった。数分前に塗り上げた筈のパーツの表面が水滴で覆われているのを見て、それでもカブリだとは思わずに、シンナーが分離したのかと思っていた程度だった。
ただ、こうしてひとたび原因が解ると、どう言う条件の時にカブリが起き易いかも解ってくる。塗料については基本的には乾燥速度が早い物程、そして当然湿度が高い程、カブリは起き易くなる訳である。
さて、このカブリ対策であるが、「湿度が高い時には塗装をしない」と言う以外には根本的な対策は無い、と言っても過言では無い。
確かにリターダーをシンナーに混ぜる、と言う方法もあるが、グロス仕上げをする場合ただでさえ塗膜は厚くなりがちで、乾燥に時間がかかると言う欠点があり、リターダーを混ぜれば当然それはさらに助長される。とすると、乾燥が早いと言うMr.カラーを使う上での最大の利点が失われる事になり、意味が無くなってしまうのである。[ 註2 ]
これではまるで、「買ってはいけない、リターダー編」みたいですが、これは勿論使い方次第です。最近では私も結構多用してますし、リターダーについては近いうちに細かく書いてみようと思っています。 |
私達の様に締切りのある作業をしなければならない場合は仕方なくそう言う物に頼らなければならない場合もあるが、基本的には、湿度のなるべく低い時を選んで塗装する様に心がける方が無難である。
具体的には、先ず安い物でよいから、温湿度計を一つ買う事をぜひお勧めする。それを塗装作業をする場所に置いて、湿度の変化を観察するのである。しばらく見ていく内に、一日の内で何時頃が一番湿度が低いか、とか同じ晴れや雨でも季節によってどれぐらい湿度に差が出るか、等が大体解ってくる。そしてそれらの経験上のデータを元にして、塗装のスケジュールを組むのである。私は大体湿度50%を目安にして、なるべく湿度がそれ以下の間だけ塗装をする様にしているが、梅雨時から夏場にかけてはこの条件をクリアする日はかなり少ないと言わざるを得ず、下塗りに関しては65%ぐらいまでは(リターダー使用を含めて)妥協する事も多い。
しかしこれが最終仕上げの上塗りとなるとそうもいかないので、JAF-CONや夏のWON-FES前は毎年、連日の天気予報チェックが日課として欠かせなくなるのである。最近ではNHKの7時直前の各地の天気予報で気温や風の予報と共に最小湿度の予報もしているので、それもなるべくチェックする様にしている。
湿度は塗装だけでは無く、ウレタンの注型を行う際にも硬化時間や発泡に大きな影響を与えるので、ディーラー諸氏にも温湿度計の設置(1000円台の物で充分)と毎日の天気予報チェックは、ぜひおすすめする物である。
さてこれが冬場になると50%ラインをクリアする日が殆どであり、30%台もザラにある。へたをすると雨の降っている夜中ですら50%ラインを下回るので、殆どカブリの心配はしなくて良くなるのだが、おかげで私は冬の夜中に、寒風吹きすさぶ戸外並の気温に下がった室内で、震えながら塗装をする事になるのである。
[照明](Light)
塗装の為のインフラ講座、この項は照明について述べる。
これは塗装だけに限らず、より良い模型制作環境をつくる上で非常に大切な要素なのだが、今までその重要さが強調される事が少なかった様に思う。
塗装と言うのは、塗装作業それ自体よりも、そこに至るまでの準備や、それを支える周辺環境の方が重要だ、と言うのが今回の塗装インフラ講座の主旨である訳だが、照明はこれらのインフラの中でもかなり重要度の高い物だと思う。
塗装をキレイに仕上げる為に一番重要な事は、その塗装をのせる為の下地をいかにキレイに整えるかにかかっている、と私は思っている。そして、その為に大切なのは下地作りの作業(具体的にはペーパー研ぎになる)を、きちんとした照明条件の下で行う事である。
下地段階では見えなかったキズや欠陥が塗料をのせると見える様になる事は皆さんも経験済みだと思うが、実はこういったキズはきちんとした照明の下でなら下地の段階でも充分見つける事が出来る物が殆どである。試しに塗装直前にまで仕上げた状態のパーツを、直射日光の下で見てみれば良く解る。このチェックで問題が出ない事はまず無いのではないだろうか。逆に、この太陽光チェックがクリアー出来る状態なら、塗料をのせても殆ど問題は無い筈である。
この様に理想的な照明と言うのは太陽光がベストなのだが、常に太陽光で作業が出来るモデラーなどはまずいない。それに照明条件を一定にする事も難しいので、なるべく太陽光に近い強さ、色調の人工照明を備える事ができれば、こちらの方が実用的にもベストであると言える。
本当ならば、トゥルー・ライトが買えれば、あれは太陽光と同じ色温度、波長分布になっているはずなので、正に理想的なのだが、あんなバカ高い照明器具を模型製作用に買える人などそうはいないだろうし、当然私だって持っていない(欲しいよ~)。[ 註3 ]
「トゥルーライト」について説明不足だったので一席。これは、「太陽光に近いスペクトルを発生する」と云う振れ込みの直管型の蛍光灯の商品名です(ネジレた形が特徴)。値段も高いですが、その分長持ちするのでコストパフォーマンスで考えれば通常の蛍光灯と同じ、だそうです。ただ、直管型(それも長い奴)しかないので、サークラインを使用している場合、照明器具自体を交換しなければならない、と云うのが最大のネックですね(「あんなバカ高い」云々とはこれを指している)。 |
実際、色に関して一寸踏み込んだ事をやろうとすると、照明の色温度や、波長分布と言った事が大問題になって来る。色合わせや色作りと言う奴は、結局は自分の目を頼りにするしかなくなるのだが、その時点で基準にした照明がいい加減な物では、いくら苦労して色を出しても、自分が作ったつもりの色にはなってくれてはいない物である。
全く同じ色でも異なった照明の下では違った色に見える事があるし、又、ある一定の照明条件の下で色合わせ作業をして、全く同一の色が作れたと思っても、違う照明の下でその2つを比べると同色にはなっていない、と言った現象は実は良く有る事である(これを「メタメリズム」と言う)。
これは人間の目の特性によって起こる現象で、一種の錯覚と言っても良いかも知れない。色というのは、光の波長分布によって決まる事は以前にも説明したと思うが、人間の目と言うのは、必ずしも波長分布が同じでなくても、補色のバランスさえ合っていれば同じ色と認識してしまうのである。
ただ、光源が変われば補色のバランスも変わってくるので、そこで初めて違う色に見える事になる、これが「メタメリズム」と呼ばれる現象なのである。
その為、実務塗装業界では色合わせは太陽光線の下で行う事にしている場合が殆どである。それもなるべく条件をそろえる為に、一日の内の一定の時間帯に決めて行う様にして、見る角度も真正面からと45度の2つの角度から見る事になっている。
これはナナメ色と呼ばれる現象のために行う物で、光源に対して真正面から見る場合と、ナナメから見る場合とで色が違って見える、と言うのは実はかなりありふれた現象なのである。
以上の様に、きちんとした色設計には正しい照明が不可欠な事が解っていただけた事と思うが、偉そうな事を言っているこの私も、前述の通りトゥルー・ライトひとつ持っていないのが実状である。
とりあえず次善の策として使っているのは、Zライトの白熱電球と蛍光灯を組み合わせたタイプの物である。これは、プラモ大好き・初級編でも紹介されている(37ページ、写真6)ので、知っている人も多いと思う。
勿論、太陽光には強さも色調も及ぶ物ではないが、白熱電球と蛍光灯それぞれの欠点をカバーする事が出来るので、現実的な選択の範囲内ではお勧め品だと思う。欠点と言えば蛍光灯がインバーター式では無い為、長時間使っているとチラチラが気になる事くらいである。
参考までに蛍光灯と白熱電球それぞれの欠点をあげておくと、白熱電球は色温度が低い為に、どうしても黄色がかる傾向があり、それに対して蛍光灯は波長分布が連続しておらず、飛び飛びにとがったグラフを描く状態に近い為、メタメリズムが起こりやすい、と言った傾向がある。[ 註4 ]
これに関しては、電撃ホビーマガジン、2001年5月号掲載の、「模型のわき道」で菅原瑞生氏が大変詳しい解説をされています。バックナンバーを見かけたら、この記事の為だけでもゲットの価値ありです。この回だけでなく、この連載は毎回充実した内容なのですが、掲載誌のビギナー向けイメージのせいで損をしている気が…(失礼!)。 |
[防塵マスク](Anti-Dust Mask)
塗装の為のインフラ講座、続いてはマスクについて。
塗装作業においては、きちんとした性能の防塵マスクは、必需品である、と言うのがかねてよりの私の持論であるが、一般的にはまだまだ、たかが模型塗装にあんな大仰なマスクなど必要ない、と言った意見が大勢を占めているのが現状だろう、しかし事は健康問題である。
どうも塗装の時のマスクは、有機溶剤を吸わない為にある、と思っている人が意外に多いのだが、私は粉塵を吸い込まない事を第一の目的としてマスクを選んでいる。通常の模型塗装でMr.カラー程度の塗料しか使用しないのであれば、有機溶剤による害と言うのはそれ程気にしなくても良いレベルだと思う。
私など自動車塗装用ラッカーやその専用シンナー、あるいはそれ以上に有害なシンナー類を日常的にたくさん使用しているが、換気がしっかりしている事もあり、何ら支障は出ていない(それはもう既にお前の脳が溶け始めていて異常を感じられなくなっているからだ、と言う意見もあるが……あえて反論はしないが、こうしてきちんと文章が書けている内はまぁ大丈夫なのではないかと思うのがとてもだいじよぶでわたしわきっとあたまがよくなるのがよいのでの一のしゅじゅちゅをしたときさつじんきになったのがもとでこんやじゅうにじひとりむすめの愛子をもらいうける愛子のからだはぐちゅぐちゅぬるぬるになっておれはおれはきもちが良い良いのでと-とつですがアルジャーノンにはなたばをあげてやって・・・・・あれ?)
失礼しました。
私がマスクに気を配る様になったのは、エアブラシを使うイラストレーターの平均寿命がかなり短い、と言う話を聞いた事。そしてマスクをしないでエアブラシを使った為に、喉が痛くなり、熱を出して寝込んだと言う事が2~3回続いたと言う経験が直接の原因になっている。例えばグフを塗っていて、終わった後でハナをかんだらティッシュに鮮やかなブルーが点々と付いた、等と言う状況は実はかなりヤバい事なのである(思い当たるでしょ?)。
そこで具体的にどんなマスクが良いかについてだが、先ず誰もが思い付くのが、3Mあたりから出ている簡易型の使い捨てマスクだと思う。これは価格も安いし、軽量でかさばらないのでお手頃、と思ってしまいがちだが、実はこれは殆ど気休め程度の役にしか立たないと言って良い。
防塵マスクの命は顔面への密着性と吸気抵抗の低さにあるのだが、簡易マスクの場合この密着性は最悪と言って良く、吸気抵抗は確かに少ないかも知れないが、それは要するに密着性が悪くて、空気が隙間から漏れ込んでいるだけの事である。
やはり本格的なフィルター交換式のマスクでなければ実用にはならない。ただし、良く見かける丸いフィルターカートリッジを取りつけるタイプの物は私はお勧めしない。
あれはカートリッジの形式に制約されてフィルター面積が余りかせげない為、きちんと顔面にフィットさせた正しい状態で使うと吸気抵抗が大きく、またフィルターもすぐ詰まってしまうので、使っていてわずらわしい事が多いのである。どうしてもこのタイプの物しか入手出来ない場合には、フィルターが2つ付いた物をお勧めするが、かなり大型になるため、別の意味でのわずらわしさがある事は否めないだろう。
私がお勧めするのは、サカヰ式と言う型式の製品で、コーケンフィルターと言うフェルト製のフィルターを交換して使うタイプの物である。模型塗装用としては1010A型と言うモデルがお手頃だろう(それでも3000円近くはすると思うが)。
私が現在使っているのは1005R型と言うモデルで、これは1010A型よりもフィルター面積がさらに大きくなっている為、吸気抵抗も低く、何よりもマスク本体にフィットチェッカーが付いている為、マスクが顔面にきちんとフィットして空気漏れが無いかどうかを確認してから作業に入れると言うのが最大のメリットである。
本当ならばこちらをお勧めしたい所なのだが、この商品に関しては、4000円近い価格、そして何よりもめったに売っている場所がないと言うのが最大のネックである。現在私が確認している取扱店は、東大宮のドイトだけであり、私自身ここが取扱いを止めてしまったらフィルターが入手出来なくなるので戦々恐々としていると言うのが実状である。[ 註5 ]
このマスクについては、「仙人小屋」の掲示板で、「マスクのホームページ」なる物が紹介され、この2つも「興研」の商品として取り扱ってました。ネット販売もやっていて、ここで紹介したよりかなり安くなっていますので、最低でも「1005」系をお奨めします。 [マスクのホームページ] http://www.mask.co.jp/bouginmask01/gareigi/gareigi01.htm |
また、どうせ高価なマスクを買うのだったら、防塵マスクではなく、防毒マスクにすれば有機溶剤にも有効なのだからそちらの方が良いではないか、と言う意見もあると思う。
確かにその通りではあるし、そうする余裕があるのならそれに越した事はないのは確かだが、防毒マスク用のフィルターと言うのは1~2時間程度しか持たないので、それこそ山の様にフィルター(決して安くはない)を用意して、それを次から次へと使い捨てて行くのでなければ意味が無いのである。少なくとも私は数時間連続の塗装作業が日常的になっているので、そんな余裕はない。
私はモデラーとしてはマスクに関してはかなりヘビーユーザーの部類に入ると思うので、フィルターの交換サイクルと言うのはマスクを選ぶ時の重要な要素の一つなのである。その点では、サカヰ式と言うのは私の様な使用条件で使っていても、フィルター交換はたまに行う程度で済んでいるので、一般的なモデラーだったらそれこそ年単位でもつのではないだろうか。
最後になるが、あれだけ換気に気を使っているのだから、その上さらにそんなごついマスクをする必要は無いのじゃないか? と言った質問を良く受けるのだが、それに対しては確かにその通りかもしれないが、用心に越した事は無い、としか答え様がない。単に神経質なだけかもしれないが、私は、たとえどんな短時間でもエアブラシを使用する際には、換気扇を回し、マスクをしてから作業をする様にしている。[ 註6 ]
現時点では、「1005R」の上位バージョンである、「6005RR」を使用しています。これも前述したマスク専門HPで取り扱いアリ。 |
[耳栓](Ear-Plug)
これも一応塗装の為のインフラなのだが、はっきり言ってこれが必要な人はまずいないと思う。ただこんな事もあった、と言う話として読んでいただきたい。
エアブラシを使った作業をしている間、一番の騒音源はやはりコンプレッサーである場合が殆どだと思う。
最近ではレトラセット社製のとても静かなコンプレッサーが人気で当Mスペースでも導入した人がいると言う噂をちらほら耳にしたりするが、大多数の人は今でもあのうるさいコンプレッサーを使って作業をしている事と思う。で、そのコンプレッサーの音がうるさいから、と言う理由で耳栓が必要なのかと言うと実はそうではない。周りに迷惑さえかからないのであれば、あれはただうるさいだけで済む。
実は先日、長時間にわたってエアブラシ作業をした際に、何とエアブラシから出るエアーの音で耳をやられてしまったのである。以前にも圧搾空気が吹き出す時の音は耳に良く無いと言う話を聞いたことはあったが、それを初めて身をもって体験した訳である。
結局それから半日近く耳鳴りが続いて、翌日になってやっと回復したのだが、それ以来用心して長時間エアブラシ作業をする際には耳栓をする事にしているのである。
圧搾空気の音と言うのは、人間の耳が聞き取り易い帯域では大した音量で無かったとしても、高波長域での音圧はかなり大きい物なので、自分でも気付かない内に耳をやられてしまうのである。
例えば、最近ではネギは出荷の段階で泥の付いた表皮をむいてしまうのだが、この作業は圧搾空気を吹きつける事で行われている。この作業は何もしないで行うと、間違いなく耳をやられてしまうので必ず耳栓をする事になっていると言う事だ。
色々と恐ろしげな事を書いてはきたが、一般的なモデラーが行うエアブラシ作業程度では、耳鳴りがする程の影響が出る事はまず無いと思うので安心してもらって結構である。
当Mスペースには、いわゆるプロ・モデラーも数名いて、彼らにも一応聞いてみたが、そう言う経験は無いと言う事だった。F氏などは「手がハンドピースのトリガーを引いたままの形に固まって動かなくなった事はあるが、それでも耳をやられた事はない」との答であった(このF氏とは、F氏の事ではなく、ましてや……自分でもいい加減しつこいと思うので止めておこう。藤崎士朗氏(H.B.C.)の事である)。
ただ私の場合は、学生時代にハードロック野郎だったりしたので、ただでさえ難聴気味なのである(私がベースを弾いていたバンドは、ギターアンプとベースアンプの2台だけで500Wは優に越えていたし、ドラムもヴォーカルもそれに負けない音量を出していた。とりあえず「音量だけ」は間違いなくサークル内で一番だったのだ)。
また、これは私自身は覚えていないのだが、乳幼児の時分に鼓膜を破ってしまった事があるのだそうだ。日常にはなんら不都合はないが、右に比べて左耳の聴力が低いのはそれが原因らしい。そんなこんなで、耳に関しては敏感にならざるを得ないので、ついつい大事を取ってしまうのである(それだったらヘッドホンステレオの方がよっぽど耳に悪いだろうと言われるのだがこれについては「スーダラ節状態」なのであしからず)。[ 註7 ]
実は、これを書いた辺りから、気がつくと耳栓なしでも大丈夫になっていたので、それ以来耳栓をする事はなくなっています。これは考えてみると、だんだん塗装時のエア圧が低くなって来る時期と重なってまして、そのせいでエア吹き出し音の音圧自体が下がった結果だと思われます。 |
[レイアウト](Layout)
塗装の為のインフラ講座、最後は塗装環境のレイアウトについてである。
これはある意味では究極のインフラであり、最重要課程と言っても過言ではないかもしれない。しかしこれほど一般的なアドバイスがしにくいテーマもない。まさに十人十色で各人各様に条件も違うし、求めている事柄もさまざまだったりして、それこそお昼の一時半にTVで電話相談を受けるのでもなければ、とてもこの程度のコーナーで対応しきれるテーマではない。
問題の根本が住環境と密接にかかわる物だし、それ以外にも家族関係、はては近隣住民までも考慮しなければならない場合も多い(私の場合も、換気扇の排気を隣家のある方向に直接吹き出す訳には行かないので、部屋のレイアウト的には必ずしもベストとは言えない道路向きに取りつけなければならなかったと言う事があった)。
取りあえずは、理想を言えばこういうのがベストですよ、と言う奴を紹介するだけして、後は各人の条件にあわせて、その範疇内で少しでもその理想に近づく様にアレンジしてもらうと言う事で話を進めて行く事にする。
私が今までで一番理想的だと思った作業環境は、やはり何と言っても、かのフランソワ・バーリンデン大先生の作業場(アトリエと言うべきか?)だった。
勿論、写真で見ただけだが、さすが巨匠の作業環境は違う! と思わされた物である。これは、バーリンデン・ウェイのシリーズ中で飛行機模型編にあたる「ON PLASTlC WINGS」と言う本に写真が載っていた物なので、見た事のある人もいるのではないだろうか(実は、数年前に人から借りて読んだ本なので記憶違いがあるかもしれないが、バーリンデン・ウェイ・シリーズの一冊だった事は確かだと思う)。
ここにその写真を載せる事ができれば話は早いのだが、上記の通り、現在手もとにないので簡単に説明すると、基本的には自分が座る椅子を中心としたUの字型のレイアウトである。こうしておけば、椅子を回転させるだけで必要な物には全て手が届く様に出来るし、U字の3辺それぞれに役割を決めて、加工用、塗装用、組み上げ用、その他に効率良く振り分ける事も出来る。模型制作だけを考えるならば、正に理想的なレイアウトと言って良いだろう。
これは以前にも書いた事だが、塗装の際のホコリ対策と言うのは、最終的には塗装中には絶対ホコリをたてない、と言う事につきる。そしてホコリと言うのは、椅子の上で座り直しをしただけで塗装の邪魔になるぐらいの量は充分に舞い上がる物である。
つまりホコリをたてない為には、塗装作業中に当然起こると思われるあらゆる事態に対して、椅子に座ったままの姿勢で対応が出来る様に前もって準備をしておく事が大変有効であり、このUの字レイアウトは、その意味からも非常に良いレイアウトである。
塗装作業だけでなく、全ての模型制作作業が椅子を回転させるだけで行える為、殆どの事態に座ったままで対処する事が出来る筈である。
ただ、いくら理想的だからと言って、全てのモデラーにこのUの字レイアウトをお勧めする訳ではない。あくまで理想は理想であるし、このレイアウトにこだわる余り、他の事柄が犠牲になる様では意味がない。
何を隠そうこの私も、新築にともなって入居した新しい自室には、喜び勇んでこのUの字レイアウトを導入したのだった。部屋の図面を見せられた時点から、その図面の上で机や棚などをああでもないこうでもないと動かして数ヶ月、ようやく決まった完璧なレイアウトは、実際に入居して家具類を運び込んでみても殆ど変更の必要もなく予定通りに納まり、正にめでたしめでたし……の筈だった。
ところが好事魔多し、世の中やはりそう何もかも計画通りに行く訳がない。いや、ある意味では計画通りとは言えるのだが、その計画自体がアマかったのである。
確かに図面で見ている分には見事なレイアウトなのだが、いざ自分がそのU字の中に入って見るとそのU字の中のスペースが思ったより小さい! あわてて机をずらしたりしてU字の幅を広げにかかるが、なまじ綿密に練られたレイアウト、余裕が殆どないのである。
まあ多少の事はガマンすれば、と気をとり直してしばらくはそのまま使っていくのだが、どうも何やら欲求不満がたまってくる。そう、私が立てたこのレイアウト、一度作業をする為にU字の中におさまると、TVが見えなくなるのである。
そこのキミ、笑ってはいけない。私だってレイアウトを決めた時からそれは解っていたし、大した問題ではないと思っていたのである。しかし、そこはやはり60年代生まれの悲しさ、骨の髄までTVっ子である自分を再確認する事となり、これが思った以上に問題になってきた。
そして、この2点以外にも、さらにいくつかの小さな問題が重なった結果、机の前に座るのが億劫になって来てしまったのである。
良く言われる事だが、模型作りをコンスタントに続けていく為に大切な事は、とにかく先ず作業机の前に座る事である。かくして、我が夢のUの字レイアウトは儚くも崩れ、現在は換気扇を頂点とした、L字型のレイアウトに落ち着いているのである。
結果として以前より部屋が広く使える様になったと言う副次的効果もあったし、塗装の際に必要な物に座ったままで手が届くと言う原則もそれ程崩さずにすんだ。
おかげでゆっくりと足を投げ出して作業が出来る様になったし、何と言っても作業中にTVが見られる。TVっ子と笑わば笑え、「TVが友達」でおなじみのH氏ならこの事の意味の大きさは解ってくれるであろう(ちなみにこのH氏とは実はH氏の事では……わ! ご、ごめんなさい、もうしません)。
とにかく何よりも、長時間連続の作業に伴う苦痛がいろんな意味において軽減された事が一番大きいと思う。こう言った心理的な要素と言うのは結構重要だったりするのだ。
この様に、各人の環境や求める物によって大きく左右されるので、これが決定版! と言い切れるレイアウトと言うのはなかなか無い物だが、とりあえずは、このバーリンデン式・Uの字レイアウトを基本として、これを自分向きにアレンジして行く事をお勧めする物である。
後記
今年もまたこの「濃い」原稿に最後まで付きあつていただいた事を感謝する。毎年ネタ切れだの時間がないだの等と言いつつこうして書き続けているのも、モデラー諸氏からの反響を励みにしての事である。ただ今回は例年になく短期間で書き上げた為、リサーチ不足による間違いがあるかも知れない。
そう言ったご指摘を含めて、内容に同する質問、乾燥、苦情、反論等は、私、石川まで直接どうぞ、と言う事で次回に続く(のであろうか?)。